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防災

スーパー堤防計画は継続している、そして他に問題がある、というはなし

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先日、前線を伴う台風により、ものすごい大雨がふり、大和川が氾濫するという災害が発生していました。

それをうけ、スーパー堤防があれば防げたのでは、というような認識をする人が出てきているようです。

しかし、これらの意見、私には違和感があります。

まず、今回の災害では、大和川に限定すると、堤防の決壊や破綻などは報じられてないようなので、基本的に(後に引用した『「高規格堤防整備の抜本的見直しについて(とりまとめ)」について』という資料を読む限り)決壊しないことが強みであるようなスーパー堤防の必要性はあまり無いように思います。
(福井の方では堤防決壊があったようですが、スーパー堤防対象の主流河川ではないので元々無関係です)

一方、事業仕分けにてスーパー堤防について、廃止が宣言されたのはその通りなのですが、その後なんだかんだあって実はスーパー堤防は復活しているのです。
(民主党政権は、八ッ場ダムや沖縄基地問題でもそうだったように、一旦宣言したことがその後、根回しの不足などが理由となり、フラフラと迷走し、結果として宣言と違う結果に落ち着く、ということがよくありました。スーパー堤防を廃止した事業仕分けもその一例です。そういう一連の流れを『根回しなどの手続きの可視化』というと非常に耳障りが良いのですが、実態としては事前準備の不足と映ることが多く、関係者を振り回し、過剰に感情を煽るなどのネガティブな方面の効用が大きかったので、それを再び起こさないことを願います)

2010年、事業仕分けにてスーパー堤防の廃止が取りまとめられます。理由は費用が超高額である上に完成しないと主効果がないのに完成は数百年後という事に尽きます。

現在でも、長大な整備計画が完成して初めて機能するスーパー堤防の「防災効果」には、防災専門家からも疑問の声が強い。むしろ近年、大河川の氾濫以上に問題視される、支流の小河川などが氾濫する「内水氾濫」や、決壊が懸念される脆弱箇所への対応を優先すべきなど、「費用対効果」の観点から反論は根強い。

 二〇一〇年の「事業仕分け」では、全国で計画されていた総延長八百七十三キロのうち、整備(着工)区間はわずか五%強の五十キロであるにもかかわらず、すでに約七千億円もの予算が投じられていた実態が明るみに出たのは記憶に新しい。これを基準に計画を算定しなおすと、総工費は十二兆円に達し、しかも完成は四百年後との試算が出た。スーパー堤防事業が「無駄」と断罪された理由だ。そればかりか、その後の会計検査院の調査では、総事業費は最大で六十六兆円にまで膨らむとの新たな試算もある。

復活遂げた悪名高き「スーパー堤防」 | 【公式】三万人のための総合情報誌『選択』- 選択出版

この時の取りまとめコメントは『現実的な天災害に備える視点に立ち、治水の優先順位を明確にした上で、事業としてはいったん廃止をすること』というものでした。

それを受け、東日本大震災前後の2011年2~9月、国土交通省にて『高規格堤防の見直しに関する検討会』という物が行われ、以下のような内容の取りまとめがなされました。

区間の全てで高規格堤防を速やかに整備することは困難であり、「事業仕分け」の指摘も踏まえて、これまでの整備区間に関する考え方を、以下のように抜本的に見直し、早期に地域の安全度の向上を図っていくべきである。
○越水にも耐えられる高規格堤防は、整備区間を「人命を守る」ということを最重視して「人口が集中した区域で、堤防が決壊すると甚大な人的被害が発生する可能性が高い区間」(※2)に大幅に絞り込んで整備する。
○その他の区間については、越水には耐えられないものの浸透・侵食等に対応しうる堤防強化対策(※3)を積極的に実施する。

「高規格堤防整備の抜本的見直しについて(とりまとめ)」について

このように、スーパー堤防は区間を絞って整備する、という方向で予算配分も再開され、整備も再開されることになりました。

ちなみに、規模を縮小した中では、2016年時点で全体の一割が(ある程度)整備済みとなっています。

国交省は1987年から、荒川、江戸川、多摩川、大和川、淀川を対象にスーパー堤防の整備を進めている。当初計画の総延長は約873kmあったが、民主党政権による2010年度の事業仕分けで「廃止」の判定が出たことを受けて事業を見直し、特に人的被害が発生する可能性が高い延長約120kmに計画を縮小した。

 荒川の小松川地区スーパー堤防は、縮小後の計画でも事業を続けることになった。都営新宿線東大島駅や東京都立大島小松川公園の付近にあり、延長は2380m、面積は23.3ha、総事業費は約348億円。05年度に着工し、最後に完成した同地区北端の上流工区は面積約5haで、投じた事業費は約100億円だった。

■完成断面を満たすのは4分の1

 国交省水管理・国土保全局治水課によると、これで整備済みのスーパー堤防の総延長は計画の1割程度の約12.3kmになった。

 ただし、国交省が「整備済み」としている区間が、必ずしもスーパー堤防に本来必要な高さや幅を満たした「完成断面」になっているわけではない。完成断面となっている区間の延長は約3.1kmにとどまっている。荒川の小松川地区スーパー堤防で完成断面の延長は約0.1kmとわずかだった。

(日経コンストラクション 安藤剛)

荒川右岸でスーパー堤防2.4km完成、まだ計画の1割  :日本経済新聞

そして、大和川沿いも計画は継続してます。
先日の衆議院議員総選挙では、そこら辺のことを公明党の北側さんが実績として掲げていたようです。

都市再生機構(UR)は19日、大和川沿いの堺市三宝地区で土地区画整理事業に着手すると発表した。洪水対策に向けた堤防強化のため、国土交通省が大和川南側の住宅を移転して盛り土でかさ上げし、高規格堤防(スーパー堤防)を建設するのに合わせ、住民向けに住宅地を再整備する。

 全体面積は13ヘクタールあり、道路や公園を整備する。事業費は220億円。堺市は12億円、残りを国交省が負担する。2034年度に完成する予定。現在、300戸の住宅があり、このうち170戸は敷地が100平方メートル未満という。希望者は堺市が買い取る。

UR、堺で区画整理 大和川沿い 宅地再整備  :日本経済新聞

流域にゼロメートル地帯が広がる大和川の河口部では現在、堺市側のスーパー堤防の上に大型商業施設や宅地を造成するなど、災害に強い街づくりが進められている。防災上優れている半面、住民はいったん立ち退き、造成後に再び引っ越す必要があるほか、通常の堤防に比べてコストが高いのが難点だ。それでも、現在はゼロメートル地帯の開発予定地に住む男性は「引っ越しが2度必要になるのは手間だが、家が流されることはなくなる」と期待を寄せた。

【インフラ再考】災害対策の最前線(1)スーパー堤防は切り札か 多発する河川氾濫、備え急務(3/5ページ) - 産経WEST

石井国交相は、2019年度に全線開通予定の阪神高速大和川線や、大和川下流域で整備中のスーパー堤防など、堺の活性化と安全のために「北がわさんが国交相時代に種を植えた事業が今、花開こうとしている」と強調。

命と暮らし守る要の人 | ニュース | 公明党

スーパー堤防構造を持つ阪神高速大和川線の事業推進(2017年3月全線開通予定)

北がわ一雄|大阪16区 弁護士・税理士:北がわの実績

このように大和川に関しても(計画は長引いているようですが)スーパー堤防計画は継続しているわけです。
なので、スーパー堤防が廃止になったことは、今回の被害とは関係ないといえると思います。
というか、完成までが長すぎて、100年ぐらい経たないと『あのとき廃止・縮小してなければ』とは言えないのではないでしょうか?

一方、大和川は、スーパーではない堤防の整備に関しても、どうしても時間がかかってしまうという問題を抱えていたようです。
今回の被害については、堤防は決壊していなさそうなので大きな問題としては取り上げられないとは思いますが、被害との関連としてはこちらのほうが、スーパー堤防よりは、まだ関係しているといえる話であろうと思います。

 都市部を流れる河川の整備は、事業費の3分の1を負担する地方自治体や、住民の合意形成などの制約にも縛られる。奈良県から大阪府へ流れ、215万人の流域人口を抱える大和川の要対策堤防は7・7キロにとどまったが、総合的な安全対策が完了するのは二十数年後になるとされる。

 上流・中流域の奈良盆地内は、多くの支川が放射状に大和川へ流れ込む地形であるうえ、府県境は生駒山地と金剛山地に挟まれた地域を流れることから、水位が急上昇しやすい。特に近年は大阪のベッドタウンとして流域が開発され、降雨時の川の増水に拍車がかかっているという。

 昭和57年夏に両府県で計2万戸超が浸水する戦後最大の洪水が発生。平成に入っても奈良県を中心に家屋浸水を伴う洪水が3回起きている。国は25年11月、自治体や住民の意見を取り入れた整備計画をまとめた。計画期間はおおむね30年とされた。

 近畿地方整備局はこれまで、下流域を中心に整備してきた。上中流域を先に整備すると、増水時に下流域の被害が大きくなってしまうためだ。今後は上中流域と下流域で並行して進めるという。

 河井准教授は「大和川の下流は都市部を流れていて住宅などが密集している地域もあり、整備に時間がかかるのはやむを得ないのではないか。近年の集中豪雨はどこでも水害が起こり得ることを示唆している。住民一人ひとりが災害への意識を高めることが求められている」としている。

奈良大阪県境の大和川、増水への不安は今後20年以上…近畿の堤防、4割が対策未了(2/3ページ) - 産経WEST

 河川の大半を管理している地方自治体の対策が急がれるが、治水行政に詳しい関東学院大の宮村忠名誉教授は「地方自治体は国以上に財政事情が厳しく、多額の事業費がかかる堤防強化にまで予算を回せないのが現状だ」と指摘する。スーパー堤防も予算もない地方自治体はこのリスクにどう対処すればいいのか。

 京都大の今本博健(ひろたけ)名誉教授(河川工学)は比較的安価で迅速な堤防の補強策を薦める。堤防に鉄製の板「鋼矢板(こうやいた)」や杭「鋼管杭(こうかんくい)」を打ち込む工法で「インプラント堤防」とも呼ばれる。

 南海トラフ巨大地震による津波への備えとして高知県が漁港の堤防改良工事で採用。岩手、宮城、神奈川、愛知各県も導入した。

 今本氏は「安価な堤防の強化策は今後も新たに開発され、普及していくだろう」と見込んでいる。

【インフラ再考】災害対策の最前線(1)スーパー堤防は切り札か 多発する河川氾濫、備え急務(4/5ページ) - 産経WEST

個人的には、スーパー堤防という大きすぎる夢を追うよりは、このような比較的現実的と言える問題をどうにかするほうが良いと思うのですが(「コンクリートから人へ」などの公共事業批判には、スーパー堤防やダムという大きくて目立つもの[≒ハコモノ]ばかり作りたがることを批判し、小さいけれど効果的なものを作ったほうが良い、的な話も含まれていたと思うのですが・・・)、どうしてもそういうことよりも政治的な対立などが入り込んで、スーパー堤防に執念深くなってしまう人が多いようです。

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