都民ファーストの取材対応について

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同会は都議選前から、候補らへの取材には原則、同会事務局の許可が必要としてきた。それが都議選後も続いている。野田数(かずさ)・同会代表(都知事特別秘書)は「どの企業も取材は広報経由。うちはこれまでの都議会と違い、民間並みの対応をとる」と話す。

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これに対し、野田数(かずさ)代表は「どんな取材を受けるのか本部が把握することは、民間企業なら当然の対応。うちは既存政党よりも確実に情報公開が進んでいる」と強調した。

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都民ファーストから学べる一番大きい事は『民間並み』という言葉は『言い訳』にも使われるということでしょう。

行政や政治と民間では、理屈が違うはずのものはたくさんありますし、『民間』と言うものには様々なものが含まれているはずです。
『行政や政治』が、何らかの仕組みを改悪する際に『民間並み』と誤魔化している事が多くあるのだろう、という事が都民ファーストから学べることなのではないでしょうか。(各地の行政など精査してみたらこういう話、他にもあると思います)

『民営化』というものが一時期(今も)流行ったように『民間』と言うもののほうが正しいと思われがちですが、実際は行政や政治の考え方にも一定の正当性がありますし、民間企業は利益重視せざるを得ない可能性が高く顧客以外や不採算事業、所属労働者を一定の合理性の元、切り捨てることがある(企業から切り捨られてもその人はその他の企業に移れたり、生きていけることが前提になっている)のですが、一方、行政や政治はどこまでも切り捨てられない事が前提になっていたりします(その行政サービスに頼っている人が行政から切り捨てられると、死んでしまうリスクが有る場合があることから)。
そのようにどのようなときも『民間』が正しいとは限らないということを都民ファーストからも学べるのかもしれません。

政党と党所属議員の関係について

民間では本部と支部という関係を前提に取材対応が考えられるのに対して、本来、政党と党所属議員の関係として想定されていたものはそのようなものではない場合が多いです。
ここでは、政党と党所属議員の関係性を左右するものとして選挙制度を元に考えていきます。

衆議院の比例代表制度となると、たしかに政党を選んで、その構成員が当選していくという仕組みなので、資本を集めた本部が資本を支部に分けて成立しているという形になるので、政党と党所属議員の関係性としては、本部と支部の関係に近いものが想定されるでしょう。
だから、比例代表で当選した人が政党を移るということは、(そのときに選挙で相対していた政党に限り)禁止されていたりするわけです。
(ちなみに、参議院の比例代表制度だと、個人にも票が入るので、選挙区制度と比例区制度の中間の、中途半端な難しい関係性であるといえます。)

一方で、地方選挙や参議院のような大選挙区制や衆議院などの小選挙区制などの、選挙区制度となると、議員が直接、票を集めて当選しているという形になっているので、本部と支部の関係というよりは、個々に資本を集めた独立企業が成立しているとかんがえられるので、議員個人の考え方を聞く取材が多くなり、党議拘束についても否定的な意見が出るようになるわけです。
選挙区制度下の政党は、国民が票を出資して党所属議員の会社の資本を形成していて、その会社が共同出資して『政党』という共同出資会社を形成する、という考え方のほうが実態が近い場合が多いのです。
その為、政党と党所属議員は、単純な本部と支部の関係とはならず、それが、良い場合は根本の出資者である投票者の意思が伝わりやすい形になり、悪い場合は『寄り合い所帯』になったり『党がバラバラ』なんて言われたり、果ては『投票した意思と違う』なんて言われる原因となりえるのです。

一方で、小選挙区制度が『政権交代を促す』という観点で導入されたように、選挙区制度だったとしても『政党』を基準として投票先を選ぶように志向されている場合があります。その場合は比例区制度と同じように考えられるわけです。
この『政党を選ぶ』のか『政治家を選ぶ』のか、そのバランスをどう考えるかによって、政党と党所属議員の関係性が変わってくるのです。
ちなみに、そのバランスは、1人を選ぶ選挙区(小選挙区)だと1政党1候補のみになる可能性が高いので『政党を選ぶ』形で考えられる可能性が高く、複数人を選ぶ制度(中選挙区制)だと1政党から複数候補者が出てくる可能性が高いので『政治家を選ぶ』志向が強くなるというように考えられると思われます。

そして、今回の『都民ファースト』の件になるのですが、東京都議会議員選挙は、小選挙区も中選挙区も存在している形で選ばれてはいるのですが、党の思想としては、『本部と支部の関係性』、つまり『政党を選ぶ』ことを前提に行動しているということなのでしょう。
ここのズレが、今回の都民ファーストの広報対応への批判の主な原因となるのだろうと思います。
(それが情報公開という都民ファーストの一丁目一番地の主張とのズレと見えるわけです)

確かに、選挙運動の時点でも、都民ファースト本部の政策を忠実に宣伝する形で行われていたということが多々言われていることから、そのような関係性を前提にしていたように思われます。

つまり、都民ファーストは、選挙区制度の『個人に票を入れる』という部分を無視し、政党を選ぶ部分にのみ特化して色々と仕組みを組み立てている政党であるのでしょう。
そういう前提で動いているならば、ブランド重視で、個人への取材は回答を例文提示で管理してしまうことも、本人たちにとってはおかしいことではありません。

更に、実際に報道などでも『都民ファースト』という政党ブランドを中心に論じられているのを考えると、このようなシステムを採用することのほうが合理的な可能性が高いです。(他党にて、党所属議員の意思がバラバラであることを批判されていることも考えると、更に合理的な可能性が高まります。)

この例えが正しいかよくわかりませんが、都民ファーストは維新と並び、『フランチャイズ制度』を政党に導入しようとしている、といえるのかもしれません。(個人的には、共産党はこの形に近いような気がしますが、本部を通さなくても本部を通したような回答ができるくらいに高度な形に発展しているといえるのかもしれません。)

フランチャイズ - Wikipedia

そして、現在の党名を使って投票者を選ぶという、投票者の志向を前提にすると、このようなフランチャイズ制度を作り上げるほうが有権者にとっても動きがわかりやすいので投票しやすいのかもしれません。

ただし、このようなシステムを採用する政党が多くなると、政治は予想しやすくはなりますが、安定しすぎてしまう可能性もあります。
政治が動く際には、政治家個人の判断という要素がどうしても存在しているわけですが、維新や都民ファーストのシステムは、その要素が動く幅を最小化する形になっていく一方で、幹部などの政党経営判断だけは最大化します。

要するに、維新や都民ファーストは、幹部だけが能力を持ち支持されている状態を最大限に活かした形式をとっているわけです。
どっかの第三極政党が複数の党首級?の人材を抱えるも、皆が好き勝手に統制無く動いた結果バラバラに崩壊したのとは間逆なのです。
政党ブランドと幹部の魅力だけで政党を成立させるとこのような形が一番良いということなのでしょう。

こういう政党は、政党ブランドが余程しっかりとしないと党首や幹部の魅力がすり減ったり、そもそもその存在がいなくなった途端に魅力がなくなっていって衰退していくわけで、短期的にしか存在意義がない政党としか言えないと思います。
それを了解した上で投票するなら良いと思います。

個人的には長期的に存在意義を維持する政党を自民党と共産党以外に複数増やさないと、自民党と共産党以外は何も積み上げない55年体制の延長のような[無駄な]時間を過ごすことになると思うので、それは回避したいのでこういう幹部だけ政党には投票しようとも応援しようともなかなか思えないのですが。

しかし、この短期的にしか維持しないであろう政党だと了解した上で投票している人が多いのだと思うのです。
短期的にしか維持しないであろうけど、そもそも短期的にすら存在意義が感じられない政党ばかりだから、短期的にしか維持しないであろう政党を選ぶ、という風に。
これが民進党の国会議員などが『受け皿が』と言っている意味なのだと思います。
(個人的には蓮舫代表を選んだ理屈は『短期的にしか維持しないであろう存在意義に頼る』ようなものだったとしか思えないのですが)

このように政党システムも投票の理由になると思うのですが、そもそも政党システムが見えてこない政党がいくつもあるわけで、それを考えると『幹部が統制している』と一見して解る形なのは、『最悪の中でもマシ』なのかもしれません。
(結果的にブラックボックスになるのではなく、最初っからブラックボックスになることを意識している可能性が高いという意味で)

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