前川元事務次官参考人招致で考えた事。

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本日、衆参両院にて、内閣委員会と文部科学委員会の合同委員会という形で、野党推薦参考人としては両院とも前川元文科事務次官、与党推薦参考人としては、衆院では規制改革特区ワーキングチームの一員である政策工房の原英史氏、参議院では元文部省官僚であり、元JASRAC理事長、そして元愛媛県知事である加戸守行氏が招致され、意見を聞く形となりました。

私はリアルタイムで見るのではなく、事後的にハフポストの文字起こしにて内容を一通り確認しました。

【加計問題】前川喜平・前事務次官、衆院の閉会中審査で 「背景に官邸の動きあった」(テキスト中継)
学校法人「加計学園」が国家戦略特区で獣医学部の新設を認められた経緯などを審議するため、国会では7月10日に前川喜平・前文科事務次官らを参考人として招致し、閉会中審査を実施する。
【加計問題】前川喜平・前事務次官、参院で答弁 「平成30年4月開学が大前提だった」(テキスト中継)
学校法人「加計学園」の獣医学部親切の経緯などを審議するため、前川喜平・前文部科学事務次官らを承知した閉会中審査が7月10日午前衆院で実施された。午後2時からは参院でも審議が始まる予定。

で、内容を見た上で二つの意図が前川氏には存在しているようだと考えました。

一つは、今回の獣医学部の規制緩和について、文科省だけが汚れ役を担っているような状態を脱し、内閣全体として責任を負っている形にすること。もっと大雑把にいうと内閣府が文科省に汚れ役だけを押し付けてきたのでお前らも少しは負担しろ、と言っているのではないか?ということ。
そしてもう一つは、開学の尻尾を切ることで事実上加計学園のみが計画を通せる状態だったものを、京都や新潟の計画も俎上に載せられるようにしようとしている、要するに開学の期限を遅らせようとしているようである、ということです。
(実質『2017/05/21 獣医学部新設について、今のところの私なりの理解メモ』で書いたことを深めた形なのですが、これを抵抗勢力とみるのかどうかが鍵のように思います。)

一つ目の点について。
流出文書に『内閣府は規制緩和までが担当だから、それ以降の大学設置審査は文科省の仕事だから、遅れても当事者がそれで納得するならいいですよ』という記述があったことが私はずっと引っかかっていて、今回『規制改革をするかどうかの問題、どこの主体に事業をやらせるかということ2つの問題があるが、後者が問題と思っている』『規制改革を進めるに当たって挙証責任がどこにあるかは政府内部の話であり、国民への説明は政府一体となって行うべきだと考えている。』という発言を前川氏が行っていたことで、より『内閣府と文科省でそういう問題が有ったのだろう』という確信を強めました。

『石破4条件などは文科省が大学設置審査で審査すればいい話』という事を述べる人もいるようですが、この論点は二つ反論があり、一つは後に述べるもう一つの『京都や新潟の計画』について関わる話なので、そちらで触れるとして、もう一つの理由としてあるのは、『総理の意向』として通された『政権の目玉』である物の規制緩和部分の決定がされたとして、その後大学設置審査で文科省によって開学が送れさせられたら『文科省が国家戦略特区の邪魔をした』などと批判が文科省に注がれたり、そうならなかった場合は今回のように政権の足を引っ張る可能性もあるような事態にしてしまうわけで、どちらにせよ、文科省には内閣府方面から相当なプレッシャーがかけられているわけで、大学設置審査で開学時期を否定するのは困難だったのではないか?と思うのです。

そこで、文科省としては多少『開学(時期)がおかしい』という認識を掘り起こさないときちんとした審査が出来ないわけで、そういう点を狙っているのかな?というのが一つ。

そしてもう一つの『京都や新潟の計画』を俎上に載せる点について。

平井議員とのやり取りで前川氏は『大学の新設を認めないという告示そのもののあり方を見直すというのは政策論として十分妥当。 見直しが必要とも考える。ただ、今後18歳人口が減っていく中ではしっかりとした議論が必要だと考えている。 問題は、規制改革の結果30年度に今治に加計学園が獣医学部を作るという結論になっている、そのプロセスに不透明な部分があることを問題視している。』と述べていて、そもそも新設を認めることについては『政策論としては妥当だけど議論が必要』としていて、要するに否定的ではあるけれど断定的に否定はしない、といういかにも官僚という回答をしています。

コレを私は『新設するかどうかではそこまで戦う気はない』という意思表示なのだろう、と思いました。

また、前川氏は共産党の宮本議員とのやり取りで今後国家戦略特区の仕組みにて2校目3校目を認めることについて『仮に国家戦略特区の中で認めていくなら、今治での成果を評価するということになる。そのためには、来年開設予定の獣医学部を見ないといけない。しかし、養成には6年かかる。研究者はもっと先。研究者がどんな分野で活躍するかを見なくてはいけない。10年内外かかる。今すぐ2校目、3校目というのはおかしいんじゃないか。』ということを述べています。

要するに、一校通してしまったら、次の『まず1校やってみてうまくいけば全国展開していく』という段階に至るまでに10年以上係るので、近々出来る可能性のある関心を持っているところ(ワーキンググループの原英史委員いわく『新潟市は具体化が遅れており、京都市は提出が遅かった。』)を今の段階で俎上に載せないとダメなのではないか?という話をしているように思うのです。

それが『加計ありき』とはどういうことか?という質問に『前川A.獣医学部の新設を求めている大学として、文科省としてはっきり認識していたのは加計学園のみだった。他にも関心を持っているところはあったが、明確に獣医学部を作りたいという意思を伝えて来ていたのは、私の認識では加計学園のみだった。愛媛県知事からも、担当の方に話がきていた。 また、担当の内閣府との間でも、暗黙の共通理解として今治における加計学園の獣医学部であったという共通理解があったと認識しています。』と回答した真意なのではないでしょうか。
(一部の人は、そもそも加計学園グループ以外に新設の意思を持っていなかったのだから、加計ありきというのは無茶なふっかけだ、としていますが)

要するに、加計学園グループしか要求がない状態で加計学園のみを意識して制度を作っていたので、他の関心のある場所が後に出てきたらそれを意図的に外す動きをしていたのではないか?(もしくは、加計学園グループ以外要求が出来ないような状態にしたのではないか)という疑惑を内閣府側にかけているのだと思います。

ここで、個人的に重要だと考えるのは、国家戦略特区ワーキンググループの方々が会見にて『新潟市が新設を提案して以降、継続的に議論してきた』と言っていることで、そこの点で前川氏と国家戦略特区ワーキンググループの方々の認識に齟齬が産まれているということです。
そして、前川氏は『内閣府と文科省では新潟などの他の場所は最初から意識してませんでした。問題はワーキンググループと文科省の間にいる内閣府です。』というような事を言いたいがために『加計ありき』の説明をこういう説明にしているのではないか?と思うのです。

また、内閣府はこういう検証に時間がかかる点について『2校目3校目やる場合は、国家戦略特区でやる。先端分野、創薬などの新たな需要があると考えている。(山本幸三内閣府特命担当大臣の答弁)』という風に別な需要を満たすという名目で別物として国家戦略特区で通すという意思を示していました。

国家戦略特区はそんなに次々と似たような分野の話を便利に通すことが出来る制度なんですね。だから様々な都市の首長が『停滞してはならない』という要望書を送ったんでしょうね。

国家戦略特区の首長ら、地方創生相へ要望書
国家戦略特区制度の問題点も指摘される中、特区に指定されている自治体の首長らが「岩盤規制改革を停滞させてはならない」などとした要望書を山本地方創生相に手渡した。山本大臣は「死んでもやるということで、決してひるまない覚悟でやりたい」と述べた。

そんな中、この感想を書くのを怠っていたら本日京都産業大学が獣医学部の新設を断念したというニュースが出てきました。

http://www.asahi.com/articles/ASK7G5J8PK7GUUPI003.html
エラー|NHK NEWS WEB

ここで教員確保が困難という理由を京都産業大学は述べていますが、幾つかの報道で加計学園グループの岡山理科大学が新設する獣医学部も教員確保で手こずっているといいますか、高齢の教員が多いなどの教員の質について文科省が大学設置認可にて指摘しているらしいという事が報じられていました。

ちなみに『国家戦略特区で一校のみと絞ったのは獣医師会からの要請』なんて話がありますが、獣医師会が要請したのはそういう教師確保などの点からなのではないか?と思っています。
獣医学部は過去に、教育の質を確保するために、幾つかの学部を一つにまとめる再編をして、教育の質を担保しようとした流れがあります。なので、複数の学校にバラけてしまうことを恐れるというのは、これまでの流れからも妥当であるだろう、と思われます。
ただ、獣医師会が要望しなくても、原委員いわく『今治市は福田内閣の時以来提案を続けていた。それ以外で新潟市は具体化が遅れており、京都市は提出が遅かった。最後の2ヶ月以外実質加計学園1校のみだった。四国には獣医学部が存在しないという切実な指摘もあった中で加計学園1校が候補であったことに違和感はなかった。』という状況、また京都産業大学いわく「教員の確保などを考えるとタイトなスケジュールだった。準備できなかった」と述べていることから、この『一校のみ』が存在しなくても京都産業大学(など)はその段階では条件を満たせないため、加計学園のみが成立するような形にされていたわけで、獣医師会からの要請は内閣府の都合のいい言い訳材料(と、獣医師会が妥協するための材料)になっただけなのではないか?と思います。

https://twitter.com/tohohodan/status/884217985925136384

なので『一校に限り』があろうがなかろうが、加計学園グループが前提ですべて組まれていた、ということの是非がここでは問われているのであろう、と思います。
そしてその『加計学園グループが前提』になる過程で、誰かの不適切な意図が介入しているのかどうか、という点で、加計学園グループの理事長と総理や萩生田氏の関係が疑惑を深める材料になっているのだろうな、ということです。
(ちなみに、前川氏はあくまでも和泉氏の行動を証言して、総理や萩生田氏の介入については、言及していないように思います。そういうことからも疑惑以上のものは[出てこ]ないのだろうと思いますが、そこに忖度などの観点が加わるとややこしいですね。)

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