渡辺喜美氏の暴走を振り返る

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『仮面の改革派・渡辺喜美』という本を読みました。

色々とメモを残しておきます。

・渡辺喜美の性格

テレビの前ではオヤジギャグをぶっ放したり、変なネーミングをしたりしていたわけですが、あれは全部『気を使った結果』であって、実際は普段は無表情で、めちゃくちゃ神経質なのだそうです。特に『言い回し』『事実関係』『細部や数字』などには非常にこだわりがあるようで、その結果があのオヤジギャグなどだったようです。

周囲を気にしすぎるために、道化にならないと表に出ることが出来ず、最後は人間不信に陥っていったのかもしれないと思うと、渡辺喜美氏は政治家向きでは無かったのではないか?と思ってしまいます。

・ツイッターで暴言を吐いた復興庁の官僚について

復興庁の『子ども被災者支援法』の担当になっていた方がいろんなことをツイッターに書いていたのがバレたという事件がありました。

その官僚の方が実はこの著者の総務省時代の先輩のようで『私が知るかぎりは非常に温厚かつ落ち着いた方で、こうした書き込みをしたというのは正直信じられませんでした』という事を著者は書いているのです。

これがどこまで本当かはわからないですが、もしそれが本当ならば、激務が性格を歪めたという事例になりえます。ブラック企業という概念がようやく広まりつつありますが、官僚もブラック体質から脱却しないと、官僚が政策や法律を放棄するというふざけた状況から脱却できないのかもしれません。悲しいですが。

・ニホン維新の会とのゴタゴタ

日本維新の会とみんなの党が合流するだの何だのでもめたことがありました。最終的には橋下徹の『慰安婦は必要』発言から一気に合流拒否に向かうわけですが、それ以前からもめていて、渡辺喜美氏は非常に維新を嫌っていたようです。

特に維新との合流はありえないということは『きちんと政調の会合や定例の役員会で報告されていた維新とみんなの党の二幹二国会議について、当時の山内康一国対委員長に「すべて報告しろ」「江田の暴走を止めろ」と激怒』したことや『1月に党大会で「維新と合流をしない」と明言をした後に、橋下に「大人の政治家になってほしい」と批判され、その後批判の応酬になった時に、橋下氏から入れられた仲直りしようとする留守電を番記者に晒して「まるでストーカー」と批判』したこともあるように、一定の時期からずっと渡辺喜美氏の中では決まっていたようです。

ちなみに、冒頭のニホン維新の会というのは、渡辺喜美氏が、日本維新の会を呼ぶときに大阪維新と太陽の党の相容れない『二本』の筋が日本維新の会として共存しているという事を皮肉ってニホンの部分の発音を替えていたことを表したものです。

・参院選でのあれこれ

日本維新の会との選挙協力を解消してから、都議選と参院選が立て続けに有ったわけですが、参院選は候補者擁立の流れが非常にずさんでした。特に女性候補をとにかく出そうということで、地元の議員との調整も行わずに落下傘候補を押し付けていたようです。その結果、とある選挙区(本には選挙区名もハッキリ書かれています)では『セーラー服で街頭活動』を行うなどの『おバカキャラでマスコミに取り上げてもらおう!』としだす候補もいたなどの、問題のある候補をフィルタリング出来ずに擁立してしまったりしたそうです。

また、選挙の候補者擁立の主導権を握るために、渡辺喜美代表の直下に選挙対策委員長を置いて、江田憲司幹事長を選挙関係の実務から外そうとするなど、選挙中に仲間割れの種を蒔いてしまったりしていました(この人事は結局、江田憲司幹事長の下に選挙対策委員長を置くことで決着しました)

・8月の政変

参院選が終わって間もないころ、江田憲司幹事長が渡辺喜美氏の事務所に来て、すごい剣幕で『誰も入るな!』と言い放ち執務室で二人で怒鳴り合いを始めたことが有ったようです。これは、この後騒動になる『政党交付金などの使い方の透明化』を含めた党改革を訴えるために来訪していたということのようです。

そして、この江田氏の訴えていた『政治資金支出手続きの透明化』について話されていた両院議員総会にて、いきなり渡辺喜美氏は『引き続き、私が代表でふさわしいのかどうか判断して欲しい』と代表選挙の実施を訴えだします。しかし、江田氏も代表を引きずり下ろすことは考えておらず、突然の訴えに誰も異論を挟むことはなく、代表再任という事にその場ではなりました。

しかし、この代表選挙の実施を訴えるときに、同時に渡辺喜美氏は『新しい執行体制の人事案を次回の両院総会にて諮りたい』ということも訴えていました。渡辺喜美氏は、そこで『人事案も一任された』と主張をして、両院総会にて『江田憲司氏を無役にする』人事案を提示したわけです。

最終的に怒号も飛び交うような両院総会を押し切って、渡辺喜美氏は江田憲司氏を無役にする人事案を成立させました。

ちなみにこの人事案を提示する前の検討段階では、江田憲司氏は『副代表』という実権のない名誉職に任命するような案も有ったのですが、渡辺喜美氏は無役にする形を選択したようです。

ちなみに江田憲司氏は無役にされただけではなく、本会議場の席を1年生議員と同じ場所にされるという屈辱的な扱いもされています。それでも江田憲司氏はきちんと国会審議に出席していたとのことです。

そんな両院総会から2週間程度が経過した8月23日。渡辺喜美事務所を、おもりでも付いたかのように腰が低い状態になっていた柿沢未途氏が訪ねます。例の『党から出て行ってくれ』と言うための呼び出しでした。面会は30分に及び、柿沢未途は会議室から出てくると、一礼をして事務所を後にしたそうです。

・特定秘密保護法での暴走

特定秘密保護法では現『日本を元気にする会』の山田太郎参議院議員を筆頭に、党内では『スジが悪い法案であり、みんなの党の精神に反する法案であり、与党に一矢報いるチャンスだ』という認識が大勢を占めていたようで、他党からも反対するだろうと思われていたようです。

実際に山田太郎議員以外にも大熊利昭議員、小野次郎議員が独自の修正案(大熊氏は「国会議員の関与等」。小野氏は「公益通報者保護等」)を作成し渡辺喜美氏に直接説明をしたり、井出庸生議員が国家安全保障委員会での質問で森まさこ大臣を問いただし、また『特定秘密の範囲を外交防衛に限定し、公益通報者を守る』修正案を作成する(井出庸生議員の修正案は渡辺喜美氏の指示)などの、特定秘密保護法を批判する動きが目立っていました。

しかし、一人だけ別方向を向いている人がいました。渡辺喜美その人です。

渡辺喜美氏はそもそも特定秘密保護法への問題意識は非常に軽薄で、「その他重要な情報」という文言の削除のみで良しとし、その他の『公益通報者保護』や『最高刑の長さ』という問題点の指摘は一切受け入れることなく、威圧的な態度ではねつけたとのことです。

しかも、いつもなら代表が出てくるのは、政策調査会にて議員間で話し合った後に報告を受けた場面なのですが、特定秘密保護法の時にはそもそも政策調査会は開かれず。

唯一開かれたのは、11月14日の夕方に行われた緊急政策調査会で、代表自ら出席し、代表の意向に沿って作られたみんなの党修正案への意見を、終始睨むような表情で聞き『ご意見ありがとうございました』の一言で終わり。

そしてその日、その案を持って、渡辺喜美氏は嬉々としてアビー・ロードの会へ。飲み会のような場で安倍総理に嬉その修正案を披露し説明。その勢いのまま修正協議へのなだれ込み、修正案は半分程度しか反映されなかったのに『修正を9割飲ませた!』と誇り、修正案に賛成する党方針を無理矢理決定させました。

ちなみに本会議直前の代議士会では、涙をこらえながら井出庸生議員が『賛成出来ない』と訴えたものの、過去の寺田典城議員への造反処分を例に出し圧力をかけ『造反するなら議席を返せ』とまで言い放ったそうです。また、本会議に挑む際に『何人造反が出るか監視しておけ』と秘書に指示も出していたとか。

衆議院では法案に賛成という党方針で挑んだみんなの党。造反者は、退席をした江田憲司氏と、起立採決で着席を貫いた林宙紀議員、井出庸生議員の3人でした。

舞台は参議院に移ります。参議院では衆議院でも有った乱暴な委員会運営に加え、新しい項目(情報保全諮問会議等)をいきなり出してくるといったことまで行われ、とても議論にはなっていない状態でした。

そんな中行われた議員総会にて、中西健治議員が『この法案を審議して分かったが、みんなの党として、とても賛成出来ない。しかし衆議院では賛成してしまっている。だからせめて棄権という対応はできないのか?』という質問を執行部にぶつけます。この質問に山田太郎議員も賛同、寺田典城議員も秘密保護法への懸念を示し、こうだ邦子議員も反対すべきとの意思表明をしました。しかし、渡辺喜美氏は睨むような表情での『賛成していただきます』の一点張り。もう誰のいうことも聞かなくなっていたそうです。

しかし、この『賛成していただきます』という姿勢が変わる出来事がありました。

姿勢が明確に変わったとわかったのは、12月4日の党首討論。

本来は『公務員制度改革』や『集団的自衛権』をやると言っていたのに、本番になって急に『特定秘密保護法の慎重審議と国会会期延長』を訴える内容に変えたのです。

これを受け、党方針も明確に変わる方向に動き、『乱暴な国会運営に講義をするための棄権』が最終的な党方針になったのでした。この裏には当時参議院の国対委員長を務めていた水野賢一議員の決死の思いの説得が有ったようです。しかし、真山勇一議員、川田龍平議員、寺田典城議員は最後まで議会に残り、明確に反対票を投じたのです。

渡辺喜美氏は、特定秘密保護法に賛成した理由を『アジェンダに書いてあるから』と述べています。しかしアジェンダには大枠が書いてあるのみで中身は書いていません。その中身自体を問うている状態で『アジェンダに書いてあるから反対不能』というのは、言い訳としてもひどい部類にあるとしか思えません。

・江田憲司氏、離党

渡辺喜美氏は、江田憲司氏がDRYの会などに出席すると、オフの記者懇談会で嬉しそうに『反党行為』と述べていたとのこと。しかも「いつまでも野党で居る気はないから」とも発言していた。そして離党しようとしている議員に対して説得する場で『みんなの党ではなくてこれからは自民党渡辺派だから』と述べた。

結局、みんなの党からは江田憲司氏を筆頭に14名が離党しました。

ここまで醜態を晒した政党がその後浮上できるわけもなく、最終的には渡辺喜美氏の8億円問題から『浅尾おろし』に至り、解党となったのでした。

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