現行の選挙制度と、その制度で想定されている政党のあり方について

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私は有権者が主役か政治家が主役か ~小選挙区制と比例代表制の比較~という記事にも書いたような『ルールとプレイヤーが噛み合わないことによる機能不全はヤバイ』という問題意識を持っています。

そして、現状認識として、選挙制度に合わせた行動を、政党や、政治家側がまだ出来ていない、という認識を持っています。
なので、そういう点について書いていきます。

現状の選挙制度は小選挙区比例代表並立制という制度になっています。

この制度が導入された理由として挙げられるのは『政権交代ができる制度になること』が第一義だったと言われています。

政権交代を生むために、そして金権政治を回避するために、同じ政治的立場にあるはずの同じ(自民)党内で戦ってしまうことをやめることを主目的にしていた制度改革だったのだと私は把握しています。

で、導入してみたら、政権交代は一度しか起きた後は、民主党はもう政権交代は起きなさそうな程の惨敗を喫しており、何度も政権交代が起きることで緊張感のある政治に、なんてのは今のところ実現していないように思います。
(緊張感が出た結果、強行採決したり、バンバン与野党が批判し合って年がら年中政府与党と野党が対立し、政府が野党に実績の材料をあげないための不誠実な政治が出来上がったという見方もあり得るとおもいますが、少なくともまた自民党が野党になるというイメージは正直思い浮かびません。)

その原因として、選挙制度と有権者·政党·政治家の行動が噛み合っていない可能性があるように思います。
そこで、今回は、『選挙の際に,私たちはどのようにして政治家や政党を選んでいるのか。また,選ばれた政治家が私たちの声に耳を傾け,それに沿って政策を実行するような状況を生み出すにはどういった条件が必要なのか。』という問いを扱っている、政治行動論の書籍を参考にして私が考えた、納得できる政治の仕組み、政党の仕組みについて、書いていこうと思います。

小選挙区比例代表並立制に変更された事で有権者の行動は明らかに変わっています。

有権者が、国政選挙にて投票をする際に参考にする情報は大まかにまとめると3種類になります。
それは『支持政党』『政策争点に関する立場』『候補者の属性(能力)』の3種類です。

選挙制度が変わる前に採用していた、中選挙区制度では、この内、『支持政党』と『政策争点に関する立場』が同じ(ような)人が複数人、同じ選挙区にいる状態だった事が、選挙制度として悪い点でした。
そんな中で差をつけて選挙区を勝ち抜くには、候補者の能力だけで差をつけないといけないため、候補者自身がもたらす利益のみが使える情報になってしまうので、政策は二の次の、利益誘導政治を行うインセンティブになってしまっていた、と言うわけです。
また、支持政党の代わりとして、派閥が利用されていったということも言えるわけです。

それが、小選挙区比例代表並立制になったことで、支持政党と政策争点に関する立場がまともに機能するようになってきました。
その結果、強引な利益誘導をしてまで候補者の能力を強調する必要もなくなり、派閥を擬似政党として活用する必要もなくなったというわけです。
(『選挙制度改革のただ一つの良い点は、総裁を中心に党執行部が強くなったことだけ。でも、政治家一人一人の質は落ちてますよ。』と毎日新聞でのインタビューで自民党の高村正彦副総裁が述べていますが、これはまさに狙い通りと言えるでしょう。)

上に提示した3つの情報は、有権者が『将来、自分の望む政策が実現する可能性(応答性)』を高めるために参考にします。
そして、これらは『これまでの業績』を参考に推定されます。

民主党(現·民進党)が2009年の政権交代以降の選挙でボロボロだったのは、この業績から推定される、応答性が低いと認定されたからです。
そして自民党はこれまでの長く積み重ねてきた政権運営業績や現政権の姿勢から、民進党よりはまだ、奇跡が起きれば何か望みを叶えてくれる可能性がある、という判断をされているという事なのだと思います。

要するに、『私の望みを聞いてくれないけど、何かの望みを叶える能力はありそう』な勢力と、『私の望みを聞いてくれないし、何かの望みを叶える能力もなさそう』な勢力の争いが、あの「ほかの内閣よりよさそう」の正体なのだということです。

これが、政権交代がなさそうな理由であり、現政権の支持率の理由です。
たとえ強行採決であろうが、非常識な手段であろうが、何かを成し遂げる能力があるならば、何も成し遂げられない(し、成し遂げたところで、大きな反発を生む事業仕分けや増税などの緊縮策である)勢力よりも、自分の願いが叶う可能性は高い、と考えるわけです。
肝心な重要政策が決まらない政治は何もできないが、重要政策が決まってしまう政治なら、なんとかコントロールすれば決められる政治に変化する可能性があるだけ、マシだということです。

話を戻しますが、中選挙区制度は、『支持政党』と『政策争点に関する立場』の違いが選挙区内で無くなった結果、議員個人による利益誘導がひどくなっている事が問題視され、その点がはっきりと出るような仕組みとして小選挙区比例代表並立制が導入されました。

この2つの点がはっきりと違いが出ることで、政治の応答性が高くなる、という判断がなされたわけです。
この2つの概念は、『支持政党=政権交代』『政策争点に関する立場=マニフェスト』という形で有権者の判断材料になっていました。
そして、マニフェストで定めていた政策の立場から変わってしまうことが頻繁だったようなイメージを抱かれてしまって、政党内でバトルしてしまうことで『政党』がブランドとして信用出来なくなった、そしてそもそも個人の能力には期待されてなかったので民進党は政権から落ちて野党に(ry

ここまでで、冒頭に書いた『選挙制度に合わせた行動』というものが要するに『政党のブランドを確立し、政策争点に対する立場をしっかり理解でき、かつ、信用できるような形で提示すること』であることがわかったのではないでしょうか?

また、日本における小選挙区制度と比例代表制度や大選挙区制度の違いとして、『そもそも選挙区に出てくる候補者の多様さ』という点があります。
日本では、小選挙区制度に高額な供託金制度を組み合わせることで、出馬へのハードルを高めたことにより、その他の制度と違い、選挙区に立候補する時点で一定程度選択肢が絞られる、という機能を持っています。

また、小選挙区制度以外にも、選挙制度関連では、政見放送などの制限により、明確に『政党が機能しないといけない仕組み』が構築されているのです。

この『政党が機能している』という状態について、どういう状態なのか、という話自体は長くなるし、まだまとめきれてないので、別な機会に。
とにかくここでは、政党の機能を強化することが求められていることを確認してください。

今回は、その政党が機能している状態の中の一部分、選挙に関係するものとして、候補者選考について言及しておきたいと思います。
自然な仕組みと人工的な仕組みの二方向から、選挙区毎に二政党の対決が出来上がるように設計されているのが、現行の日本の選挙制度です。
この、選挙制度を前提にすると、選択肢に残る2つの政党(の候補者)は、幅広い民意を包容する必要性が出てきます。

そこで、政党には、この幅広い民意を拾うため、多くの人が納得するような候補者選定の仕組みが整備·公開されていることが求められるのです。
もっと明確に表現すると、自分の政党の側に含まれる複数の選択肢を一つにまとめ上げる仕組みが存在し、(ある程度)公開されている必要があるのです。

そこで、参考になりそうなものとしては、日本が小選挙区制を採用する際に参考にしているイギリス下院の候補者選定の仕組みがあると思われます。
(アメリカ連邦議会選挙もありますが、アメリカの制度では日本の制度のように「党中心」ではなく「候補者中心」になってしまうので、制度とギクシャクしてしまうと思うのです)

この、イギリス下院(庶民院)での政党の候補者選定の仕組みについて、保守党の話を書いたブログを見つけたので、参考にリンクしておきます。
2012-02-09 保守党の公認候補選定はまず能力評価でスクリーニングする
2012-02-12 イギリスの国会議員候補は(ほぼ)仕事を辞めない

このように、まず、党本部主導で能力を評価し、その後、その中から選挙区支部ごとに書類審査やプレゼンテーション審査などが行われて、最後は一般党員まで含めた投票で候補者が決まる、という仕組みのようです。

このような透明性のある、部外者も納得できる候補者を決める仕組みが整備されることが、政党としての信用に、長期的には必要となってくるのではないでしょうか?

ただ、このような仕組みは、選挙と選挙の間がきちんと一定期間開くことが前提となるように思うので、現状の日本のように、解散権が結構自由に使えるような前提だと、このような透明性のある候補者選定というのは、無理なのかもしれませんが。

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