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労働問題

JAほこたにて外国人技能実習生に残業割増が未払いだった農家が居た問題について

2017/01/25 全期間:115views   直近一週間:views  直近一ヶ月:2views

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なんというか、技能実習生という制度自体とそれに関わる事業者が残念であることがあらわになった事件だなぁ、と個人的には見ています。

 

そもそも技能実習制度とはなんなのか

技能実習生という大義名分からして『先進国に技術を移転するために行っている事業』という表向きの名義があります。
なので、『研修生』といえるような、そういう技能を学ぶために受け入れるはずで、労働力として受け入れるわけではない、という名目があります。
そのため、元々の名目は『技能研修制度』であり、一年間『研修』という扱いで報酬を受ける活動を禁止(あくまでも受け取るのは研修手当)され、労働基準法の労働者にはならない、というポジションに居ました。(在留資格も『研修』だった)
しかし、それでは『実践的な知識を学ぶことが出来ない』などの障害があったという名目で、研修を終えた後の二年間『実習生』という雇用関係を結ぶことで実践技能を学ぶ、という技能実習制度が誕生します。(在留資格『特定活動』創設。)

 

ただ、ここで実態と名目の乖離が発生します。
名目上は一年目は研修、二~三年目が技能実習という技能伝達のために使われるものなはずなのですが、この制度を元々『労働力を受け入れる』ために使う企業などが出てきます。
すると『研修生や実習生を低賃金労働者として扱う企業』が出てきたりしたわけです。特に研修生は労働関係法令の外にあるためにトラブルが多かったようです。(厚生労働省の『研修・技能実習制度研究会中間報告』参照)
そこで、様々な省庁が改正案を提案した結果、自民党内閣により『入管法(正式名称「出入国管理及び難民認定法」)』が改正されて、技能実習制度に一本化され、二ヶ月の講習後、即雇用契約を結ぶ現在の技能実習制度に改正されたのです。

 

一方で技能実習制度になり労働基準法内に入っても『実質、外国人を低賃金で働かせている』という問題点は抜本的に解決しているわけではありません。そこでJITCOはガイドラインに『賃金は、日本人労働者が従事する場合に支払われる賃金と同等額以上の賃金を支払う必要がある。』と記載しています。要するに批判よけでしょうね。

 

農業労働者と技能実習生の待遇の違い

農業や畜産、水産業などの分野では、じつは労働者を扱う際に『一部労働基準法の適用外』になる部分があります。
それが『労働時間・休日・休暇』の規定です。
なので、深夜残業以外では農業などの労働者は時間外手当や休日出勤手当は適用されません。
通常の賃金を払えば良いということになっています。
理由は『気候や天候に大きな影響を受けるという特殊性』とのことです。

 

しかし、農水省はこの技能実習生受け入れに際して、以下の通知を出したのです。
外国人技能実習生労務管理ハンドブック2014年3月版の109ページに記載されている『農業分野における技能実習移行に伴う留意事項について』)
『農業の場合も労働生産性の向上等のために、適切な労働時間管理を行い、他産業並みの労働環境等を目指していくことが必要となっている。
 このため、技能実習移行に当たっては、労働時間関係を除く労働条件について労働基準法等を遵守するとともに、労働基準法の適用がない労働時間関係の労働条件についても、基本的に労働基準法の規定に準拠するものとする。』
要するに、「技能実習制度を使って雇用関係になる場合は、技能実習制度を使わない場合に『適用除外』されるものでも労働基準法を準拠しなさい。」という通知です。

 

そこで相変わらず労働力として頼っている農家としては『かれらが残業や休日出勤すると割増になるなら、彼ら以外でやったほうが安上がりだな』となってくるわけです。(だから茨城新聞にあるような「割り増し分が必要だと分かっていれば残業なんかさせなかった」という発言が出てくる)

実習生の思惑?とそれを利用する受け入れ先

これまで『名目上と実態の乖離』として『受け入れ側が労働力として頼っている』ということを散々強調してきましたが、受け入れ側だけでなく、送り込む側、また実際に実習生になっている方も『出稼ぎ』として日本に来ていることも多々あるようなのです。

 

そこで有料記事だけど掲載したJAほこたの組合長、三保谷氏の一問一答での言い訳というか、発言内容をここで掲載します。
組合長がじつは『入国管理局』から指摘を受けた後も、残業したときに発生する割増に料金を払わずに残業をさせたいたのです。
その理由が以下の一問一答になっています。

 

記者 残業代の『1.25』『1.35』の割増規定についてどう考えるか
組合長 最初は入管も『1』で通っていた。それが駄目になった。制度の不備が混乱を招いている。変えるべきだ。
記者 残業しても割増せず『1』でいいということか。組合長が受け入れている実習生に割増分は払っているのか。
組合長 「残業はしなくていい」と言ったら(実習生が)『1』でいいからやらせてくれと頼んできた。お金が欲しいというのでそうした。送り出し機関ともそういう契約になっていた。
記者 実習生と合意の上ということか。
組合長 了解していた。彼らは借金して(日本に)お金を稼ぎに来ている。子どもたちも(送金される)国の家族も喜んでいた。
記者 実習生の1人から残業代の割増分を請求されたのか
組合長 (請求されて)払った。違法だと言われればそうだし、処分されても構わない。

 

記事の一問一答自体はまだ続くのですが必要だと思われる部分のみ抜粋しました。
個人的には、組合長は外国人技能実習生が出稼ぎとして来ていることを都合のいい言い訳にしているように思えてなりません。
『これまでは了承の上でやってたのに、金にがめつい奴が請求してきたから破綻したんだ』というような。

 

一方で『実習生と農業労働者』で残業の扱いにズレが有ることは何方かを是正しなければならないことも明らかのように思います(理想的には、労働基準法を農業にも完全適用する事を目指すことになるだろう。技能実習制度で出された通知的に)

 

ただバレた経緯が記事曰く『今月20日夜、三保谷組合長方から中国人実習生1人が失踪し、別の農家が保護して未払いが発覚。実習生は東京入管や鹿嶋労働基準監督署に実情を訴えた。組合長は23日、30カ月分に当たる割増賃金四十数万円を、知人を介してこの実習生に支払った。』
『実習生は26日の帰国直前、茨城新聞の取材に対し「先輩もそうだったし、お金のことは記録していたわけではないので、分からなかった。(未払いを)知った時にはがっかりした」と話した。』
となっている時点で、本当に実習生本人からきちんと説明して了解を取っていたのか、という部分が微妙だなぁ、と思ってしまいます。
(この支払った金額について毎日新聞の報道では『三保谷組合長は約1年半にわたり、雇用していた中国人の女性技能実習生に、残業代の割増賃金を毎月約30時間分を支払っていたが、それ以上の時間分の計約35万円については支払っていなかった』と多少ズレが見受けられる)

 

また処分を受けた農家も「われわれは農協の言う通りにやってきて処分された。農家を守るべき農協に『お前らが悪い。農協は関係ない』と言われ、裏切られた思いだった。まさかその組合長がいまだに払ってなかったなんて」と言っているように、そもそも三保谷氏が組合長であるJAの体制自体が『無説明のなぁなぁ体制だった』疑いすら出てきます。
(三保谷氏は処分通知が来たことが発覚した記事にて「(割増賃金については)農家に説明していた。農協は要望があった農家にあっせんするだけで、実習生との問題は農家が自分たちの責任でやってほしいと指導している」と発言していた)

今後、技能実習制度はどうするべきなのか?

結局、今回の問題は『外国人技能実習生という名目で労働者を雇っている現実』を改めて世の中につきつける、そういう問題だったのかな、と思います。
茨城新聞も『鉾田市は青果物出荷額だけで年間350億円以上とされ、全国有数の農業生産地。このうち実習生の労働力は全体の約4割を占めるとされ、今回の事態で地元経済への影響も懸念される。現在、ピーク時に約2千人いた実習生は1600〜1700人。震災直後に減った数が回復基調にあったという。』と書いてしまっていますし。

そんななか現在、政府は新成長戦略の中で、『国際貢献を目的とするという趣旨を徹底するため、制度の適正化を図る』といいつつ対象職種拡大、実習期間延長、受け入れ枠拡大を図ると述べているのですから、より制度の実態と名目が乖離していく未来が思い浮かびます。

更に、一部が自民党を支持する保守論壇に目立つ『外国人労働者反対!』みたいな事も言ってられないわけで(むしろ、そういう意見も『実習生という名目の労働者受け入れ』に加担している気がしなくもない。これは私のバイアスの可能性が九分九厘ですが)、やはりキチンとした体制で労働者を受け入れることが出来る方向を目指していかないと行けないということだと思う。
なんで、技能実習制度は超優良企業のみに規模を絞らないと『制度の適正化』なんて測れないだろうと思うのです。
技能実習制度の縮小(現在も『研修』のビザが残っているのでそれへの統一)と、労働ビザの対象職種拡大して、更に転職を自由化する、そういうような形が一番、制度の適正化としてまともな形になるのではないかな?と思います。(日弁連の『外国人技能実習制度の廃止に向けての提言』を参照すると良いかもしれない)

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