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御嶽山の噴火災害は『民主党の人災』?仕分けは関係あるの?

2017/01/24 全期間:22views   直近一週間:views  直近一ヶ月:3views

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この記事の所要時間: 106

こんなツイートを見たので検証

・この記事はどの新聞のいつの記事か?

このツイートの根拠となっている『火山国ニッポン、備えはいま』という記事、どこの新聞がいつ書いた記事なのか?

答えは『朝日新聞の記事』です。
朝日新聞が『2010年7月5日~7月8日』に連載をした記事の7月6日分のようです。
ちなみに連載された記事の内容はWEB新書という形で全文読むことが出来ます。(噴火は忘れた頃にやってくる 火山国ニッポン、備えはいま

・ツイートの要約は正しいか?
ツイートではこの記事の頭の記述と後ろの方の記述を使って、記事の内容を『「大規模噴火は数千年に一度。警戒は無駄」勝間和代氏ら「仕分け人」から厳しい指摘が相次いだ。 しかも、91年、07年にも小規模な噴火を繰り返している御岳山でさえ、 観測強化の対象からはずされた。』と要約しています。しかしこの抜粋は誤った認識に誘導する抜粋であるとしか言いようがありません。

仕分け人の指摘に関しての記述を使っておりますが、その仕分けでの指摘と御嶽山が観測強化の対象から外されたのは関連しておりません。
後に細かい資料は出しますが、少なくとも記事中での記述を使うだけでそこは否定できるので、この時点では記述を抜粋して否定します。
画像の記事で言う4段目の2段落目から大学の研究設備についての記述が始まっているのでそこから抜粋します。(太字は筆者強調)

一方、研究データを提供し、気象庁の火山観測を補ってきた大学の観測網にもほころびが目立つ。国立大学は2004年の法人化で国からの運営費交付金が毎年1%ずつ減らされている。03年度に計1億1100万円だった観測装置の維持費は06年度には計6800万円まで減った。
長崎県で雲仙・普賢岳の観測を続ける九州大の地震火山観測研究センターでは、山のふもと4ヶ所で、1991年の噴火以前に設置した古い地震計を使っている。近くで農作業があるとその振動でデータが狂う。清水洋センター長は「電気代などを節約して修理などに当てるのがやっと。更新はできない」と話す。

そうしたなか、文部科学省は08年、大学が観測している全国の33火山のうち、活動が盛んな16火山で観測を強化する方針を打ち出した。残りの17火山については大学の裁量に任せ、支援はしない。

強化対象の16火山については5年程度で、文科省と独立行政法人防災科学技術研究所が高精度の観測機器を設ける。09年度にはまず5火山8ヶ所に機器を導入した。ところが、この計画も政権交代による方針変更などが重なって今年度は予算がつかず、観測強化は看板倒れ寸前だ。

しかも、長野県と岐阜県境で79年に有史以来初めて噴火し、91年、07年にも小規模な噴火を繰り返している御岳山でさえ、観測強化の対象からはずされた。観測を続ける名古屋大の木股文昭教授は「気象庁の観測体制が不十分なまま大学の観測網が縮小されてる。これでは活火山の監視をやめるに等しい」と話す

まず計画自体が作られたのは08年、政権交代以前の話です。
そして政権交代による方針変更などにて『計画自体に予算がつかない』状態になったわけです。
ここで気をつけなければいけないのは『予算がつかない』だけで計画の内容はいじってはいないということです。
要するに計画の内容をいじる以前に計画自体に見向きしなかったというのが実際なのではないかと思います。科学技術全般の予算を抑える方針になり、そこに巻き込まれて計画自体に予算がつかなくなった、というような話ではないのかな、と。

というわけで、『観測強化の対象からはずされた。』 というのは『そもそも08年に策定された計画の時点で外されていた』という話です。そこに政権交代があったかどうかは関わっていません。

それは以下に抜粋する共同通信の記者が書いた記事の書き方を読むとすっきりわかるのではないかと思います。

大学の厳しい事情を背景に、文部科学省は08年、大学が観測する33火山のうち、活動が盛んとした16火山の観測を強化する一方、残りの17火山は各大学の裁量に任せることにした。
 1979年に有史以来初めて噴火した後、91年、07年と小規模な噴火が続いた長野、岐阜県境の御嶽山は強化対象から外れたが、名古屋大が観測を続ける。活動はおしまいなのか、大規模噴火につながるのか―。見極めができないからだ。
 同大の木股文昭(きまた・ふみあき)教授は「判断するには地道な観測が不可欠。すぐに成果は出ないが、続けていれば大噴火でも住民の命は守れる」と強調する。

この記事は間に政権交代などの記述がなく、計画の時点で外れていたことがわかりやすく書いてある記事だと思います。
というわけで仕分けと御岳山の強化対象から外れたことはそもそも無関係です。と記事自体を読むだけである程度は言えます。
そして、それはこれから示す資料を読むと、もっとハッキリと無関係とわかるのではないかと思います。

・行政事業レビュー
記事の冒頭で行政事業レビューに言及がなされていました。
この行政事業レビュー、特徴は『レビューシートと検証結果が原則公開である』という点です。
なので、この時の指摘内容などの概要はある程度把握できるようになっているのです。

ちなみに朝日新聞の記事のなかで書かれているのですが、行政事業レビューの結果は『抜本的見直し』でした。

まず行政事業レビューで使われたレビューシートと資料はこちらです。
その中でも行政事業レビューでの論点をまとめた論点等説明シートと、レビューシートにある自己点検の記述の部分を画像化してここでは貼っておきます。

WS000098
WS000099

そして行政事業レビューの結果の取りまとめがこのpdfの10ページ目にありますので、内容を画像化して貼っておきます。

WS000095

取りまとめにあるように『整備に際しては優先順位をつけて、後年度負担も考慮した上で計画的に行うべき、また、大学等他機関との連携、情報共有化、調達方式の改善等によって予算の効率化を進めるべき、さらに、火山観測の観測対象・水準について必要な検証を行うべき』が外部有識者などの指摘内容だったわけです。

で、コレを受けての予算の概算要求への反映状況もキチンとまとまっています。(このpdfの61ページの真ん中)

WS000100

というわけで前年度より3700万円減(6%減)の概算要求となりました。
・予算確保状態はどうなっているのか

気象庁の火山観測事業へのこれまでの予算のつけられ具合は、近年だと先ほどの行政事業レビューシートと、平成25年度の行政事業レビューシートを見ると大体わかると思います。

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WS000103

また、平成7年度~平成18年度までの火山噴火予知研究関係予算(範囲が行政事業レビューが対象としている気象庁の事業だけではないのに注意)の額は平成20年7月に科学技術・学術審議会にて配付された『地震及び火山噴火予知研究計画関連データ』という資料に額と棒グラフが掲載されていました。

WS000104

この二つを比較するかぎり、麻生政権の補正予算のように、1年限りでドカンと予算が付く場合はあれど、基本的には予算はいつも少ないという印象を受けますね。あと上の行政事業レビューにある平成19年度予算(本予算は第一次安倍政権が作成)の額だけ異常に少ない(2億円台)のが、個人的には気になりました。

・文科省が出した観測強化の方針

冒頭に有った朝日新聞の『16の火山で観測強化、17の火山は大学の裁量にお任せ』という方針は測地学分科会火山部会にて配付された「今後の大学等における火山観測研究の当面の進め方について(案)」という資料に書いてある方針の内容の事を指していると思われます。

なぜそう言えるかというと、この案について審議した『第 112 回火山噴火予知連絡会』とその幹事会の議事録にてこういう記述があったからです。

第 112 回火山噴火予知連絡会幹事会 議事録より

②測地学分科会火山部会「今後の大学等における火山観測研究の当面の進め方について(案)」

増子委員から配布資料をもとに説明。
 <質疑等>
・3ページ目の「②その他の火山について」に関して、気象庁の支援・協力が困難な場合の対処の考え方は固めているか?
・国として責任ある対応を取るよう検討を進めている。
・火山地域では、ほとんどの地方自治体は経済的に余裕がなく、国がやらないとできない。
・国がやるのはもちろんだが、地方自治体に限らず独立行政法人なども念頭に入れるなど幅広く各機関が協力連携するという観点から、地方自治体も含めて考えたい。
測地学分科会火山部会「今後の大学等における火山観測研究の当面の進め方について(案)」について部会から報告を受けた。数を絞って重点的に観測する大学と国との対応について報告があった。

 

●火山観測体制等に関する検討会
・検討会では研究機関と気象庁の観測体制の基本方針を決めた。方針としては、研究機関は、測地学分科会の検討結果を受け、選択と集中で観測体制を強化する。気象庁は、今まで以上に関係機関との連携を強めつつ、検討会選定の火山について観測の強化を行う。大学は16火山に絞って研究を行うが、それ以外の火山については、監視能力が落ちないように気象庁は観測点の維持・管理にできる限り協力する。データ流通については作業部会等を設置して来年度引き続いて検討する。また、具体的な観測体制についても来年度引き続いて検討する。

そしてそれを受けて資料を見てみたところ、あくまで『案』という形ですが、16火山の名前が出ている記述がキチンとあったので、この案が方針そのものとなったのであろうと思うに至りました。

その16の火山の名前を転載します。
1.阿蘇山
2.霧島山
3.樽前山
4.有珠山
5.北海道駒ヶ岳
6.草津白根山
7.浅間山
8.口永良部島
9.岩手山
10.富士山
11.伊豆大島
12.三宅島
13.雲仙岳
14.桜島
15.十勝岳
16.諏訪之瀬島

以上、16の火山が『重点的に強化すべき火山』として列挙されていました。
ここに案の定御岳山(御嶽山という記述でも)はありません。
そしてここで強化指定された火山以外にある大学の観測施設については
『今回案として示した「重点的に強化すべき火山」以外の火山にある大学の観測施設については、気象庁の観測監視に寄与してきたことを踏まえ、火山噴火予知連絡会火山観測体制等に関する検討会において、気象庁の支援・協力を念頭におき、火山防災対応に支障のないよう検討されることを期待する。』
という支援を他人任せの状態にしているため(その後の実施状況も加味して)『残りの17火山は各大学の裁量に任せることにした』という記述がなされることになったということのようです。

・結論

というわけで、御岳山の観測施設については、そもそも08年策定の文科省の計画自体から外れていたので、民主党政権も事業仕分けも一切関係なく、政権交代以前からずっと支援不足状態だった、というのが実際のようです。
そしてずっと支援不足だったということは、これを人災というならば『民主党』という限定は使えないだろう、というのが基本的には言えるのではないでしょうか?

・追記
関連記事を書きました。これもおまけにどうぞ
民主党の事業仕分けで火山観測の補正予算が切られた?

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