景気条項は麻生政権時代からあったのか? 金子洋一氏の手柄とは?

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毎度毎度金子洋一参議院議員は毎度毎度突っ込まれてて可愛そうだなと思うんですが、現在有効な景気条項(ようするに三党合意で設定された景気条項)は民主党が主導した形跡が多く見られ、自民党は削除を要求していた形跡がある、ということは前に『景気条項について、民主党が数字を決めて、自民党は付け足した。』という記事で書きました。

で、今回気になったのはこの野田政権ぐらいに設定されているはずの増税法案に入っている景気条項を『麻生政権の時からあるじゃん』と言っていることなんです。

で、なんだそれ、と言ってたらそれは『所得税法等の一部を改正する法律附則104条』のことなんだと教えてもらいました。

ということで私が普段景気条項とよんでいる附則18条と別なものを景気条項と読んでいることがわかりました。

所得税法等の一部を改正する法律附則104条とは以下の内容です(一部消費税に関係ないところを省略)

第104条 政府は、基礎年金の国庫負担割合の2分の1への引上げのための財源措置並びに年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する費用の見通しを踏まえつつ、平成20年度を含む3年以内の景気回復に向けた集中的な取組により経済状況を好転させることを前提として、遅滞なく、かつ、段階的に消費税を含む税制の抜本的な改革を行うため、平成23年度までに必要な法制上の措置を講ずるものとする。この場合において、当該改革は、2010年代(平成22年から平成31年までの期間をいう。)の半ばまでに持続可能な財政構造を確立することを旨とするものとする。
前項の改革を具体的に実施するための施行期日等を法制上定めるに当たっては、景気回復過程の状況、国際経済の動向等を見極め、予測せざる経済変動にも柔軟に対応できる仕組みとするものとし、当該改革は、不断に行政改革を推進すること及び歳出の無駄の排除を徹底することに一段と注力して行われるものとする。
3 第1項の措置は、次に定める基本的方向性により検討を加え、その結果に基づいて講じられるものとする。
(略)
 三 消費課税については、その負担が確実に国民に還元されることを明らかにする観点から、消費税の全額が制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する費用に充てられることが予算及び決算において明確化されることを前提に、消費税の税率を検討すること。その際、歳出面も合わせた視点に立って複数税率の検討等の総合的な取組を行うことにより低所得者への配慮について検討すること。
(略)

今回の記事に関係しそうなところを勝手に太字にして下線引いておきました

というわけで、この法律は消費税だけでなく様々な税率の改定の前提として、『経済状況を好転させること』。
そして、そういう『改革を具体的に実施するための施行期日』は『景気回復過程の状況、国際経済の動向等を見極め、予測せざる経済変動にも柔軟に対応できる仕組みとする』ものとして、更に歳出削減を徹底すること、ということを設定したものです。

一方で、『平成23年度までに必要な法制上の措置を講ずる』や『2010年代(平成22年から平成31年までの期間をいう。)の半ばまでに持続可能な財政構造を確立することを旨とする』など具体的に期限が区切られていることもあり、なんというか曖昧模糊としている条文だなという印象を受けます。(それは今回焦点となっている附則18条もそうなのですが)

で、この法律、実は野田政権の増税の理屈として、この期限があることが出されました。
(2009年度税制改正法)付則104条に基づき、年度内に法案を提出する義務がある
これが野田政権が増税法案を提出した理由です。
更に与謝野氏がこの『期限』を仕掛けたという日経新聞の記事もあります。

で、麻生現財務大臣も野党時代には何度か
『麻生内閣の時にいわゆる附帯条項104条ってのが付いてて、それにはちゃんと景気が良くなってからというのが書いてあるの。(ブログ記事より引用)』

『● この消費税について、平成21年、つまり麻生内閣において成立した改正所得税法附則104条を、民主党はよく引き合いに出される。その法律には第1項に、「消費税を含む税制の抜本的改革を行うため、平成23年度までに必要な法制上の措置を講ずる」との1文がある。しかし、その前にある一番肝心な部分が、意図的に読み落としているのか、読み飛ばしているのか、読まないようにしておられるのか、いつも決まって無視されている。それは、「経済状況を好転させることを前提として」というところだ
● そして、2項には、「実施するための施行期日等を定めるに当たっては、景気回復過程の状況、国際経済の動向等を見極め、予測せざる経済変動に柔軟に対応できる仕組みとする」とある。これは、首相官邸で詰めに詰めたもので、財務相ではなく私自らが会見を行った。この文章が附則にあることで初めて、消費税の話ができたのだ。つまり、前提条件の部分が最も大事なところだ。それなしに、ただただ消費増税をするのはダメだ
● では、果たして今、経済状況は好転したか。麻生内閣で日本経済全治3年と申し上げたが、この2年間でどうなったか。景気はむしろ悪くなっているのではないか。政権交代後の成長戦略無き経済政策が影響しているのは明らかだ。また、欧州の経済危機など国際経済の動向も不安定だ
● 即ち、この法律をよく読めば、「104条」を盾に消費増税はできないことが分かる。それを安易に自民党のせいにするのは公正でない(麻生太郎ホームページより)』

というように度々この104条を自ら持ちだしています。

また、民主党議員が今回の景気条項を作る話し合いの中では
『前述の附則 104 条においても、閣議決定した大綱においても、消費税の増税は経済状況の好転を前提としています。デフレを脱却しないままに増税を敢行しても税収を増やすことはできないばかりか、ますます消費を冷えこませ、デフレを加速しかねません。(安井美沙子メールマガジンより)』
『附則104条は、消費税率改正案の附則18条として引き継がれ、「税率引き上げの規定に関し、経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる」と記された。加えて、名目3%、実質2%の経済成長を目標とする数値も盛り込まれ、景気条項はより具体的になった。(長尾敬ブログより)』
また、馬淵澄夫議員のブログにもいくつか附則104条に触れた記事がある(増税議論に際しての整理附則104条への具体的視点税調、ようやくの修文決着)ことや、社会保障と税の一体改革に関する特別委員会で『当委員会でもたびたび指摘をされている部分でありますが、この十八条、「消費税率の引上げに当たっての措置」としているのは、これについて、もともとは二〇〇九年、平成二十一年の所得税法等の一部を改正する法律、この附則の百四条を受けてのものである』と発言しているなど、この附則104条の方が景気条項を話し合う際に背景にあったことは明確なようです。

特に馬淵澄夫議員の記事に依ると『前項の改革を具体的に実施するための施行期日等を法制上定めるに当たっては、景気回復過程の状況、国際経済の動向等を見極め、予測せざる経済変動にも柔軟に対応できる仕組みとする』という条文が根拠になっているようです。
要するに、『経済変動にも柔軟に対応できる仕組み=景気条項』という解釈を行ったということです。

また東京新聞の記事にもこうあります
『 Q 景気への配慮は増税推進派、慎重派とも主張している。もめている理由は。

 A 野田佳彦首相らは、成長率などを増税の前提条件にすれば、増税は事実上不可能になるとして応じない考えだ。増税の根拠にしている自公政権時代の改正所得税法の付則一〇四条にも数値はない。慎重派も容認し、一月に政府・与党が決定した一体改革大綱素案にも数値はなく、書き込む必要はないという考えだ。』

要するに附則104条と同程度の内容にするのか、それとも更に踏み込むのか?というところでバトルしていたようです。

一方で、 自民党は景気条項の数値目標を削除するよう要求(『景気条項を削除するように要求』という記述もいくつか有ります)、結局『数値は努力目標で、引き上げるかどうかはその時の政権が判断すること』という三党合意が行われました。

更に、この104条が制定された当時の麻生太郎氏が『経済状況の好転とはなんぞや?』ということを亀井久興議員に聞かれた時の答弁では
『経済状況の好転、これはなかなか指標のとり方によって随分いろいろ違っておりますけれども、一般的には、景気が悪化しているという状況から持ち直して、そして改善してきつつあるという状況、形容詞だけで言えばそういうことになるんだと思いますが、その判断に当たっていろいろな指標が使われることになるんだと思います。最終的には、いろいろな数字ももちろん大事だと思いますが、国民の生活や、景気という気の部分がございますので、やはり経済の実態などをいろいろ考えた上で判断するというような最終的な政治判断が要求されるものだと思っております。

 単に数字がこうなったからぱっとやるというのは当たるかどうかといえば、これは過去に失敗例は幾つもございますので、その意味では、何を指標にするかというのは、極めて政治判断を要する経済判断なんだと思っております。』

ということで、数値目標には否定的で、曖昧な表現に抑えて、その場の政権の判断に任せたほうがきちんと判断できるという事が、附則104条の考え方にはあるようです。

また、附則104条を定めた理由を、民主党の西村まさみ議員に最近の決算委員会で聞かれた麻生財務大臣答弁

『あのときに私が一番記憶があるのが、リーマン・ショックというものが大きく出ましたものですから、西村先生、あのときは、短期の改革は大胆にやる、そして中期は極めて責任を持ってやらねばならぬということを申し上げたんだと思うんですが、そうした中で、政府・与党において議論をいただいたのが、平成二十一年度の与党税制改正大綱というのが出てくるんですが、その中で、読み直してみますと、改革の道筋を立法上明らかにすることなどをもって、我々が直面する経済金融面の危機のみならず、社会保障の安定財源確保、格差の是正や経済の成長力の強化という中期的な課題にも応えた財政を構築するという責任を担う姿勢を示していかねばならぬという考え方が共有をされたんだと、あのときはそう思っておりました。

これを受けて、所得税法の附則百四条という形で、段階的に消費税を含む税制改正というか、抜本改正を行うためのルール、スケジュールというものが道を定められたと認識をしております。この附則第百四条に沿った立法というのは、そのスケジュールにつきましては、政権の交代があるなしに関係なく、これは時の政権が最終的にはそれをやるかやらないかは定められたとしても、それを最終的に判断するのはその担当するときの政権の判断になろうと思いますが、ただ、そういう政権の判断であろうとも、附則第百四条を改正するという義務が必要になるんだと思っております。

したがって、国会の中において、閣議決定と違って法律ということになりますと、一応国会の中においてきちっとしたやり取りというものをやっていかねばならぬので、立法府と行政府がそれぞれ責任を分担し合うということになろうと思いますので、責任を分かち合うという意味で、私どもとしてはそういったものをきちんと求めないと、この種の話は非常に危機的な状況と思っておりましたので、そういった対応をさせていただいたと記憶をいたします。』

という答弁を残しています。

附則104条の経済状況の好転についての答弁では『数字で判断して実行すると失敗する』 という方向での否定的な発言が数値目標に関してなされているのですが、実際はそういう方向ではありません。(民主党が附則104条をパクったと主張しているブログでも『数値のみで安易に消費税率アップの法案が出されることを懸念した』という憶測を載せている)
それ以上に、なぜ数値目標自体に反対するかというと、先ほどの野田総理の理屈のように『増税が事実上不可能になる』ということがありえるからです。
産経新聞の記事に書いているように『過去10年間で、名目成長率で最も高かったのは22年度の1・1%。実現は容易ではなく、増税を最終決定する政府の判断を縛りかねないからだ。』ということでしょう。

また、プレジデントの記事では
『後に菅直人内閣にも入閣し、民主、自民の両政権で増税の推進役を担った与謝野馨(元経済財政相)が打ち明ける。

あれは私が書いた法律。公明党は嫌がっていたけど、『定額給付金を実現したいなら附則を書くのに賛成してくれ』と言って粘った。公明党も最後は呑んだ。附則の規定は将来の内閣を拘束する。自民党がいつまでも政権を握り続けることに、私は不安を感じていたからです」
この仕掛けは与謝野と増税実現が宿願の財務省の共同執筆だったと見て間違いない。与謝野の予想は的中し、半年後の9月に政権交代となる。「向こう4年間、消費税増税はしない」と代表の鳩山由紀夫が明言する民主党が政権を握った。
財務省は「平成23年度までに必要な法制上の措置」という仕掛けが効き目を発揮するのを待った。仕掛けに基づいて「10年7月の参院選での増税提唱、11~12年で増税法案成立」というスケジュールを立てていたと見られる。
と、与謝野氏が、後の政権を縛る意味で書いたと打ち明け、その一方で、国会質疑では自民党の礒崎陽輔参議院議員が

この条文案書いたの私なんですよ、これ百四条一項書いたのは。書いた人間が違うと言っているんですよ、これは。書いた人間が経済情勢の好転がなければ国税の法案出さなくてもいいと、そういう意味だと言っているんですよ。』
と野田総理への質問で述べています。

・収集がつかないのでこのへんでまとめます

まず、附則104条と附則18条の景気条項がリンクしているのは事実のようです

一方で附則104条の解釈にはいろいろあって、すんなりと附則18条に落とし込まれたとは言えなさそうです。

よって、景気条項が出来たのは麻生政権と金子洋一参議院議員のどちらの手柄でもある、そして民主党政権時代に前線で戦っていた金子洋一参議院議員には一定の手柄が有り、死守という言葉はあながち間違いとも言い切れない、のではないのでしょうか?

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