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「情報参謀」が比較できない数字を比較している

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週刊東洋経済の2016 12/10号に、自民党のデータ分析関係に関わっていて「情報参謀 (講談社現代新書)」という書籍を出した小口日出彦氏が『「露出」で勝った自民党』というタイトルの4ページを占める記事を載せていました。

しかし、その文章の中で、明らかに情報の扱い方がおかしいと思った部分がありましたので、そこについて書いておきます。

それは記事の2ページ目にある以下の文章です。

10年夏の参議院選挙では自民党が13議席増の84議席を獲得。ねじれ国会の状況に持ち込んだ。この選挙で自民党のメディア戦略に大きな学びをもたらしたのは、小泉進次郎氏のネットCMだ。「ほどほどの努力では、ほどほどの幸せもつかめない。一生懸命頑張って、一番の国を作ろう」と呼びかけるCMが、投票直後までに約13万回も再生されていた。

この月に最も多くテレビCMを流した企業は顔王で、約720本(30秒換算)を流した。また、最も多くCMに出たタレントはペッキー氏で、露出回数は約750回(同)だった。再生1回を露出1本・1回として比べると、進次郎CMは本数比で180倍、回数比で173倍だ。もはやネットは軽視できない。私は参院選直後のリポートで、ネット戦略の重要性を訴えた。

(引用文中の太字は私が勝手にしたものです)

もし、これを自民党が聞いて『そうだな、ネット戦略は大事だな』とそっくりそのまま思っていたら、それは自民党が騙されている、としか言いようが無い気がします。

なぜ、騙されているといえるのかというと、引用文中で私が太字で強調した『再生1回を露出1本・1回として比べると』という比較方法が明らかにおかしいからです。

以下、説明します。

ネット側の例として持ちだされているのはYouTubeでの小泉進次郎氏の動画の再生回数です。YouTubeの再生回数は視聴人数とその人が何回見ているかを混ぜあわせた数字(ページビュー)になっているはずです。
(実際には再生回数の計算方法は公表されていないようです。この時点で他の数字と比較することは出来ないと思うのですが、ここでは一応近いであろう計算方法を提示して進めていきます)

最も基本的なアクセス数の指標の一つで、Webページが閲覧された回数を表す。ページ内で参照している画像など外部のファイルの数などには影響されず、Webページを1画面開けば1ページビューと数える。

これに対し、同一の訪問者による一連のページ閲覧を1つとして数えたものを訪問数(ビジット、visit)という。ある閲覧者がサイトを訪れ、3つのページを閲覧して別のサイトに移った場合、訪問数は1ビジット、ページビュー数は3ページビューとなる。

ページビューとは|PV数|PV|Page Views - 意味 / 定義 / 解説 / 説明 : IT用語辞典

一方でTV側の数字ですが、まず花王の例で出されている数字はCM動画をTVで流した回数です。
その数字には小泉進次郎氏の例と比較するには足りないデータが有ります。
それはそのCMの視聴者数です。

何回TVで流れているか、というデータを提示されても、それはYouTubeの再生回数とは全く比較出来ず、それを一本につき何人が見ているかが判明して、漸くページビューと同じデータがはじき出されることになります。

ベッキーの露出回数も視聴した人数が不明なので、花王の例と同じようにYouTubeの数字であろうページビューと同じ数字ではありません。

YouTubeの再生回数の根拠は公表されていない、というのは上に書きましたが、大体、ウェブのこういう数字は、ページビュー、若しくは訪問数です(ページビューの説明を参考に)

一方、テレビCMのデータは、閲覧者数がわからないため、そのどちらにも引っかからない数字を使っているということなので、YouTubeの再生回数と同じ土俵で比較して180倍だとか言われても、その◯倍には何も意味が無いのです。

その本当は意味のない、インパクトだけある間違った数字を使って『ネットは軽視できない』と言われても、それはネットに間違った価値を与えているに過ぎません。
(広告費を払わずにこれだけ視聴された、とかそういう方面での比較ならまだ意味があるでしょうが)

そんな数字を使ってネット戦略の重要性を訴えている人が『情報参謀』だと考えると、ちょっと大丈夫なのかな?と思ってしまいます。

 

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