平成26年11月5日 村井英樹(自民党)質疑 『安倍内閣の労働政策の方向性』

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第187回国会 厚生労働委員会 第5号(平成26年11月5日(水曜日))

この一週間前の委員会にて、審議入りした派遣法について、政権与党の質疑の最初になされたのがこの村井英樹議員の質疑です。

この時点では村井英樹議員は一期目。新人議員でトップバッターを任されるという事で、要するに余計なことは言わずに、政府の方針を説明するように促す役だけやればいいような、そういう質疑だと思われます。

そこで今回は政府方針の基本的なところを質疑内容から抜き出して置きます。

 

村山委員  労働政策を議論する際に注意をしなくてはならないのは、企業側、労働側の利益を二項対立する形で捉えて、片方を応援すると片方を苦しめることになるといった類いの議論に陥ることだろうと思います。

経済政策の分野の議論で、厳し過ぎる労働規制も六重苦の一つとされておりますが、労働者の利益を余りにも短期的視野から保護し過ぎてしまうと、企業も海外に出ていってしまったりだとか雇用を減らしてしまうということで、結果、労働者の利益を損なうということになるんだろうと思います。

そういう意味で、労働政策の要諦は、企業側そしてまた労働側のニーズをしっかりと酌み取って、いかに適切な制度設計を行ってウイン・ウインの関係を築いていけるか、そういうところにあるんだろうと思います。

二項対立ではなくWin-Winというのは良く言われることですが、それをやると力のある方がそのルールを活用し、力のない方はルールを活用する能力や余裕が無いために結局Win-WinではなくWin-Loseの関係になるのが常なのです。特に労働法制だと使用者側、要するに企業側が主導権を握り、労働者側は使われる側、使ってもらう側なため使用者側の方針に従うしか無い、という関係が常となりがちなのです。

そういう事を背景としているのが『企業側、労働側の利益を二項対立する形で捉え』た議論なわけで、それをこのようにあっさりと否定してしまうと、Win-Winという理想的なことしか出てこない議論で出来た法制で、現実はWin-Loseの二項対立関係が見事に出来上がってしまうなんて事になりかねません。それをわかった上で村井英樹議員はこれを述べているのでしょうか?

また『短期的視野から保護』という言葉が出てきていますが、長期的な損になる可能性のあったものを『短期的視野』と誤魔化した『痛みを伴う改革』という誤魔化し方や、その『短期的視野』が労働者にとってどれだけ重要か、というのをわかっていないのではないか?と言わざるを得ません。『短期的が満たされなければ、それが原因で長期的にはもっと満たされないことになる』という事を考慮にきちんと入れて欲しいものです。

 

塩崎大臣 安倍内閣としては、若者も女性も、そしてまた高齢者も、あるいはその他の方々を含めて、やはり全員参加型の社会というものを実現していくことが一番大事だというふうに考えておりまして、それも、一人一人が、みずからが選べるライフスタイルというのが、あるいは希望をかなえられるというのが大事であって、社会で活躍の場を見出せるということが個人個人できるように、柔軟で多様な働き方というものを可能にするような、そういう労働市場改革をしなければいけないんじゃないかというふうに思っております。

今回の改正案も、みずから働き方として派遣を積極的に選択される働く方々についてはその待遇の改善等を図る、一方で、正社員を希望する派遣の方々については正社員への道が開かれるということが大事であって、全ての人がそれぞれ独自の生きがいを持って安心して働けることが大事ではないかと思いますので、そのような社会をつくることを目指して、今、改革をしているところでございます。

『柔軟で多様な働き方というものを可能にするような、そういう労働市場改革』というのが安倍政権の方針として語られていますが、そういう意味で欠けているのは『選択肢を用意しても、可能性が低ければ「可能である」とは実質的に言えない』ということです。

労働法制的には『範囲の中で、使用者側の都合が優先されがち』というのが常なので、選択肢を増やすと、条件的に使用者側の都合がいい選択肢が枠が広がり、都合の悪い選択肢の枠が狭くなるという事に自動的になります。その結果、利用者側、つまり労働者側の都合に沿わない労働市場が構成されてしまうのです。それを『雇用のミスマッチ』と言っているように思うのですが、そこに目を向けることなく『選択肢を増やす』事ばかり目が向いているような気がするのは気のせいでしょうか?

 

坂口政府参考人 労働者派遣制度でございますけれども、こちらの方につきましても、まず、労働者側のニーズとしては、自己の希望する日時でありますとか場所、あるいは専門的な知識を生かして就業することを希望される方のニーズに応える、労働者側のニーズに応えるという側面がございます。

また、企業側のニーズという意味では、企業において専門的な知識とか技術とかそういったものを必要としている業務に対応できる人材を迅速的確に確保していくというようなことがございまして、まさにそういった労働力の需要、供給の両面における労使双方のニーズに対応して、労働力需給調整システムの一つとして機能を果たしてきたということだと理解をしております。

こういう機能につきましては、今後も、労働市場においても我が国において引き続き重要な役割を果たすということが期待されると思いますし、先ほど大臣からも御答弁させていただきましたように、柔軟な、多様な働き方ということを実現する上でも非常に重要だということで考えております。

『専門的な知識』というのがどちらのニーズを説明するときにも出てきているのですが、労働者側は『自己の希望する日時でありますとか場所、あるいは専門的な知識を生かして就業することを希望』と専門的な知識がない人が存在している一方、企業側の説明では『企業において専門的な知識とか技術とかそういったものを必要としている業務に対応できる人材を迅速的確に確保していくというようなこと』と専門的な知識の・ようなものを必要としている業務のニーズのみ説明されています。

要するに、今回考慮されているニーズから『専門的な知識がない人』の存在が抜け落ちているのではないでしょうか?

しかし、ハケンの品格でも事務として派遣が扱われたように、専門的な知識というのが曖昧な業種の方が、専門的な知識を有する派遣業よりも、より労働者にとっては身近な派遣のイメージではないでしょうか?身近であるということは要するにだれでもなり得る可能性がある、つまりより影響力の大きい部分になっているはずであり、その点が触れられていないのは今回の派遣法改正案の盲点なのではないでしょうか?

 

山本副大臣 労働者派遣の課題といたしましては、雇用と使用、これが分離しているために、派遣労働者の雇用の安定またキャリアの形成、こういったことが図られにくいという課題がございます。また、そのほかにも、現行の業務単位の期間制限についてはわかりにくいといった指摘がなされております。

このため、今回の法律案におきましては、労働者派遣事業を全て許可制といたしまして、派遣労働者の安定した雇用継続のための措置とともに、キャリア形成の支援等の仕組みを法律に盛り込ませていただきました。と同時に、また期間制限のあり方を働く人に着目したよりわかりやすい制度に見直すこととさせていただいておりまして、先ほど申し上げた課題に対応させていただくことになっております。

『雇用継続のための措置』というと一見同じ職場に居続ける事が出来るのかとおもいきや、個人単位では3年までしか同じ職場(部署)には居続けることが出来ません。それ以上居るためには、派遣元との無期契約を結んでいるか、3年経過時に派遣元が派遣先に義務として依頼する正社員契約が正式に結ばれるか、どちらかが必要です。

また、派遣元との無期雇用契約をとっても、同じ職場に要られるかどうかは派遣先と派遣元の契約次第なので、様々な職場を転々とせざるを得なくなる場合もあります。その場合、雇用継続のための努力義務が派遣元には付されますが、要するに、派遣先の判断一つで別な職場に移らざるを得なくなってしまうのは変わらないわけです。その場合、キャリア形成としてそれは成立しているのか?というのは疑問符が付くのではないでしょうか?(無期契約の方が派遣先が存在しなくとも派遣元から給料が保障されるので、それも『雇用継続のため措置』と言えるのかもしれませんが「給与の安定=キャリアアップ」かというと…?)

業務単位についてはわかり易さを追求することによる弊害というものが出かねない可能性があるとは思いますが、具体的なことはこの後の別な方の質疑で出てくると思われます。

 

坂口政府参考人 審議会におきまして、労使双方の委員の方から、この特定労働者派遣事業につきましては、本来これは常時雇用する労働者のみを派遣する事業ということになっておるわけでございますけれども、定義上その中に無期雇用派遣の方だけでなくてもよい、一年以上の雇用見込みがあればいいというような形で運用しておりますので、中には有期雇用の方が多く含まれているというような実態があるということ。それから、現実に、各事業者さんの状況から見ても、一般労働者派遣事業と比しましても、行政処分の件数が多いというような実態があったこともございます。

それから、先ほど申しましたような定義とも相まって、一般労働者派遣事業の許可要件を満たせないということもあって、特定労働者派遣事業と偽って事業を行っている事業者もいるというような、さまざまな問題点が審議会の中でも御指摘がなされまして、建議においても全ての事業を許可制とすることがふさわしいということとされたところでございます。

全てを許可制にするということで、何かあったら許可を出さないで潰すというプレッシャーが業者にかかりやすくなりました。しかし、ここは政府の調査能力次第といいますか、現在労働基準監督署がまともに機能するような能力がないまま、時々機能する程度で成り立ってしまって、結局労働基準法が守りきれていなくても許されている現状がある以上、政府がまともに取り締まる体制を作らない限り、緩い許可でいざというときに許可を出さないトカゲの尻尾切りをする程度にしか機能しない可能性があると言えるのではないでしょうか?

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