平成26年10月29日 厚生労働委員会 (派遣法改正案趣旨説明)

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第187回国会 厚生労働委員会 第4号(平成26年10月29日(水曜日))

 

この前の国会で派遣法改正案の罰則が『一年以下』となるべき場所が『一年以上』になっていたというミスから廃案になり、そこを修正した上で、ようやく審議入り出来たのが、昨年の解散前の臨時国会でした。

そして、冒頭に議事録のリンクを貼った委員会は塩崎恭久厚生労働大臣が、派遣法改正案の提案理由など趣旨説明を行っている委員会です。

 

『労働者派遣制度は、我が国の労働市場の中で、労働力の迅速かつ的確な需給調整を行うという重要な役割を果たしています。』

派遣制度の重要性を説明するために大臣が話した文章なのですが、この需給調整という概念、凄いと思います。この発言では“労働力”とされていますが、要するに労働者の需給調整をする機能が、労働者派遣制度なのです。

需給調整ということは、需要と供給があり、供給するのは『派遣会社』が『派遣社員』を使用する一般会社などに供給するわけで、需要というのはその供給を受ける会社がどれだけ労働者を必要としているのか?というものを指すと思われます。

ここで労働者が、派遣会社と派遣先の会社の事情に左右されやすい事が、そもそも制度の役割の前提にあるのがわかると思います。

そして、派遣労働者を保護する名目と見せかけて、実は労働者の足かせになってしまっているのが『派遣労働を臨時的、一時的な働き方と位置づけることを原則とするとともに、その利用についても臨時的、一時的なものに限ることを原則とするとの考え方』という部分です。

『派遣労働は一時的という原則』がある場合、きちんと正社員にすることを原則に同時にしないと、派遣労働者が一時的な派遣労働を終えたあとの行き先が存在しないわけですが、その正社員にすることが原則となっていないために、派遣労働者は一時的な派遣労働を終えたあとは、無職となるか、別な職場(又は同じ職場の別な課)で再び派遣労働者にならざるを得ないというのが実態になってしまうのではないでしょうか?

そういう点と、冒頭で語られたように派遣法の役割が『労働力の需給調整』にあるために、あくまでも義務を課せられるのが『派遣元事業主』であって、派遣を受け入れる、要するに本来正社員を増やす方向に動いて欲しいはずの派遣受入事業主には以下の義務が付せられるだけになっています

 

十五 派遣先における適正な派遣就業の確保等
1 派遣先は、その指揮命令の下に労働させる派遣労働者について、当該派遣労働者を雇用する派遣元事業主からの求めに応じ、当該派遣労働者が従事する業務と同種の業務に従事する労働者が従事する業務の遂行に必要な能力を付与するための教育訓練については、厚生労働省令で定める場合を除き、派遣労働者に対しても実施するよう配慮しなければならないものとすること。(第四十条第二項関係)
2 派遣先は、当該派遣先に雇用される労働者に対して利用の機会を与える福利厚生施設であって、業務の円滑な遂行に資するものとして厚生労働省令で定めるものについては、その指揮命令の下に労働させる派遣労働者に対しても、利用の機会を与えるように配慮しなければならないものとすること。(第四十条第三項関係)

3 派遣先は、派遣元事業主により派遣労働者の賃金が適切に決定されるようにするため、派遣元事業主の求めに応じ、その指揮命令の下に労働させる派遣労働者が従事する業務と同種の業務に従事する当該派遣先の労働者の賃金水準に関する情報を提供することその他の厚生労働省令で定める措置を講ずるように配慮しなければならないものとすること。(第四十条第五項関係)

4 3のほか、派遣先は、十二の措置等が適切に講じられるようにするため、派遣元事業主の求めに応じ、その指揮命令の下に労働させる派遣労働者の業務の遂行の状況その他の情報であって当該措置に必要なものを提供する等必要な協力をするように努めなければならないものとすること。(第四十条第六項関係)

出典:労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案要綱

全部の内容が『配慮』か『努力』で済んでしまうのがわかると思います。実際にどうなっていようが『配慮』した形跡や『努力』をした形跡があれば良いということではないでしょうか?

派遣受入事業主などの労働市場に“配慮”した結果がこれなんでしょうが、派遣元だけに義務を課し、派遣受入事業主は配慮や努力で済んでしまうという格差が生じているのは、派遣労働だけではなく、現在の日本の労働市場を形作っている労働法制全体の問題点を浮き彫りにするようなものだと思うのは私だけでしょうか?

 

 

 

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