外国関係 政策・思想

単純小選挙区制で泣いたイギリス独立党、笑ったスコットランド国民党

2015/11/06 683views

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本日、イギリスでは庶民院の総選挙が行われて、この記事を書いた19時時点でほとんどの選挙区で結果が判明した感じになっています。

イギリスの総選挙は単純小選挙区制という、小選挙区のみで行われているのですが(日本の衆議院議員選挙から比例代表制を抜いた形)、今回の結果がまさに小選挙区制らしい結果になっていたので、それを纏めておこうと思います。(以下の画像はBBCの選挙速報サイトSky Newsの総選挙速報サイトからキャプチャーしたものです。)

まず、以下の今回の結果(日本時間5月8日19時時点)を見てください。

イギリス総選挙 2015 結果

このような結果になったのですが、注目して欲しいのは得票数(VOTES)の部分です。この表は議席数で並べているのですが、全国的な得票数と議席数が必ずしも対応していない、ということがわかると思います。これが小選挙区制の特徴であり怖いところです。

小選挙区制だと、全国的にいくら得票しようが、選挙区で一位にならなかった票は全部議席には無関係な票となってしまいます。ですから、以下のように得票数が激増したイギリス独立党でも議席は改選前は保守党からイギリス独立党に鞍替えして補欠選挙を戦った結果確保した2議席を確保できるかどうか、という段階にとどまり、イギリス緑の党も1議席を確保するにとどまる予想となってしまっているのです。(自由民主党〈英〉の2010年総選挙からの得票の減らし具合も凄いですが)

イギリス総選挙 得票率 得票伸び率

イギリス独立党とイギリス緑の党は全国の選挙区に候補を出馬させています。そしてどの選挙区でも一定数の票を確保し、イギリス独立党はほとんどの選挙区で2~3位に顔を出しています。(以下のイギリス独立党の総選挙時の党首「ナイジェル・ファラージ」の出馬した選挙区が良いサンプルになっている気がします。)

ナイジェル・ファラージ落選

しかし単純小選挙区制では2位以下の票はいくら確保しても議席としては0でしか無いのです。なので得票数と議席数の大きな乖離が発生するわけです。

ただ、議席には反映されませんが、得票率が報じられれば『選択肢として有力に機能していた』という分析になり、得票自体は一定の影響力が出るのではないかと思います。しかしぼんやりとした一定の影響力以上の物は生まれにくいと思いますが。

そういうイギリス独立党が小選挙区制に泣いた一方で、小選挙区制によって躍進したのがスコットランド国民党でしょう。

スコットランド国民党は全体の得票数としては5%に届かないくらいの得票なのですが、議席数は56/650(約9%)というパーセンテージとしては約二倍の議席数を確保できています。これはスコットランドの小選挙区でのみ勝負を懸けて見事にスコットランドの小選挙区をほぼ総取りした形となったために、効率的に議席が増えたという形になったわけです。(下の画像の黄色の部分がスコットランド国民党が議席を確保した場所。スコットランドだけ真っ黄色に染まっているのが分かる。)

イギリス総選挙 議席確保具合

また議席確保の効率という点では、西アイルランドの地域政党である民主統一党(Democratic Unionist Party)やシン・フェイン党(Sinn Fein)、社会民主労働党(Social Democratic & Labour Party)などの面子の効率の良さも目につきます。(西アイルランドの選挙区で、二大政党は労働党は社会民主労働党と友好関係なので出馬せず、保守党は出馬しても相手にされていないようです)

 

以上のように単純小選挙区制では地域政党の効率の良さが目立ちます。

なぜ、こういうことになるかというと、(特にイギリスは主権を持たない国の集まりなのでそういう傾向が強いのですが)中央政府のその地域の扱いに対してイエスかノーかを問う戦いに持ち込むことで『地域政党VSその他の中央政党』という対決構図を作り、『二大政党』以外の対決構図を作ることに成功しているために、議席確保が容易になっているのだと思います。

一方で、イギリス独立党やイギリス緑の党の選挙戦は『思想』というような面が全面に出る戦いになっているのではないか、と推測できます。特に緑の党はそういう傾向があると思うんですが、それだと対決構図が明確になりにくいのかな、と思います。そうなると、(有力議員がそもそも存在しない限り)一位を狙うほどの勢いが出にくいのではないか、と思います。

単純小選挙区制だと一位になると議席確保できるので、一位を狙う勢いが注目を集めてより得票出来るようになっていくという正の連鎖の起点となるのだと思います。そして、その勢いを作るのが対決構図である、という感じなのだと思います。そして明確な対決構図を作ったスコットランド国民党が議席を伸ばし、対決構図が全国的に散ってしまったイギリス独立党と緑の党は全国的に票は確保しても、選挙区で集中しての得票にはならず、議席には反映することが出来なかった、という流れなのだと思います。

これは、日本の小選挙区制でもある程度参考になると思いますが、選挙区ごとの有権者数が大きく違うことや、地域事情の違いなどがあり、更に比例代表制で議席を一定数は確保できるので、日本にスコットランド国民党のような政党は、現れても沖縄のオール沖縄規模になってしまうのだろうと思います。(目立つ地域政党として大阪維新の会という存在がありますが、国政になると他の勢力と合併してしまうために、ここまで地域政党らしい戦い方はできていないと思われます。また、新党大地は対決構図の明確化が二大政党以外のものにはなっていないと思っているので地域政党とは違うのかな、と思います。)

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